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東京大学の次期総長選びで、学内の意向投票で2位の候補が選ばれた。1位は1107票、2位は553票だった。この話は、「選ぶ権限」と「選んだ理由の説明」の2つに分けると見えやすい。選ぶ権限については、ルールで認められている。一方、説明には、まだ答えのない問いが3つ残っている。僕が気になっているのは、この3つだ。

選ぶ権限は、ルールで認められている

2026年9月28日、東大は意向投票を行った。2回目の結果は、染谷隆夫氏が1107票、藤垣裕子氏が553票、山本隆司氏が451票だった。同じ日、総長選考・監察会議(以下、選考会議)は、2位の藤垣氏を次期総長予定者に選んだ。

選考会議が2位を選べる根拠は2つある。

1つは東大の内規だ。選考会議は、候補者の資料、推薦書、面接を含む調査、所信表明を見る。そのうえで「意向投票の結果を総合的に考慮して」総長予定者を決める(第16条第1項)。1位を選ぶ決まりはない。

もう1つは国の指針だ。国などがまとめた国立大学の運営の指針(ガバナンス・コード)は、選考会議が自らの権限と責任で主体的に選ぶことを求めている。そこには「意向投票によることなく」とも書かれている。

だから、「1位を選ばなかったのはルール違反だ」とは言えない。

平成以降、1位が総長になってきた

東京大学新聞のまとめでは、平成の7回の総長選は、すべて意向投票の1位が総長になった。1989年4月に就任した有馬朗人氏の選考では、決選投票が586票対586票の同数で、くじ引きで決まった。2020年も、意向投票で最多の951票を集めた藤井輝夫氏が選ばれた。

これまで: 平成の7回と2020年、1位か同数の1位が総長になった。今回: 2026年は、2位が選ばれた。

これは結果の話で、1位を選ぶ決まりがあったわけではない。同じ総合判断でも、2位が選ばれることはあり得る。ただ、これまでと違う結果になった以上、今回の判断で票の結果をどう扱ったかを説明する必要は、むしろ大きくなると僕は考える。これまでの結果を知る学内の人ほど、なぜ今回は違うのかを知りたくなるからだ。

1107票対553票、東大はなぜ2位を総長に選んだのか
写真:Kakidai/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

説明責任は、筋道を示すこと

説明の方には、国が示した物差しがある。文部科学省は2014年9月の説明会で、学長を選んだ理由の示し方を説明した。根拠を「可能な限り具体的に」示すことが大事だという。社会から問われることも自覚すべきだ、とも述べた。問われるのは「本当に主体的に選考を行って、そして理由が付いているのか」だ。先の運営の指針も、人事への配慮を求めつつ、できるだけ具体的に公表するよう求めている。

求められているのは、結論までの筋道を、学外の人が確かめられる形で示すことだ。

説明されたことと、残っている3つの問い

東大は、藤垣氏を選んだ理由は説明している。選考会議は選考理由として、藤垣氏の「学術への信頼を回復する強い意志と能力」を挙げた。科学技術を社会に伝える力や、学問の分野や学内外をつなぐ力も評価している。議長の国谷裕子氏(NHK「クローズアップ現代」のキャスターを務めた)は、9月29日の会見で「6年間を託すに値する能力、資質を持った方」を選んだと述べた。東京大学新聞の会見の要約によると、意向投票は「あくまでも選考資料の一つ」という説明だった。

それでも、答えのない問いが3つ残る。

  • なぜ、1位の染谷氏より上なのか。 藤垣氏の長所は書かれている。しかし、比べてどこが上回ったのかは書かれていない
  • 1107票対553票という結果を、評価項目でどう扱ったのか。 選考会議は3月13日付の評価項目に「組織構成員の幅広い支持と合意形成能力」を入れていた。評価項目は評価の参考として使うもので、票の順位だけでこの項目が決まるとは書かれていない。それでも、2倍の票の差をこの項目の中でどう見たのかは知りたい
  • 意向投票は、どのくらい重いのか。 「選考資料の一つ」なら、10票の差と1000票の差は同じなのか。これまで1位が選ばれ続けてきたことと、今回の判断の関係も分からない

個人の情報を守っても、判断の基準は言える

人事の選考だから、すべてを公開すべきだとは思わない。委員の話した中身まで出せば、次から優れた人が手を挙げにくくなる。

ただ、個人の情報を明かさないことと、判断の基準を説明しないことは別だ。「重点ポイントのうち、最後はこの2つを重く見た」「得票の差は重く見たが、別の項目で藤垣氏の評価が上回った」。こうした形なら、候補者の細かな評価に踏み込まずに、少なくとも判断の筋道は示せるはずだ。

議長自身も、透明性を掲げていた

議長の国谷氏は、今年4月22日付の議長の所信表明に、こう書いている。「より一層、会議運営における透明性・公平性が求められます」。総長を選ぶ年だからこそ、という文脈だ。3つの問いに答えることは、議長自身が掲げたこの言葉にも沿うはずだ。

選び直せ、ではない

僕は、染谷氏を総長にすべきだったと言いたいのではない。僕たちは選考会議の資料も面接の中身も見ていない。藤垣氏を選ぶ確かな理由があった可能性は十分にある。だからこそ、その理由を3つの問いに答える形で聞きたい。

選ぶ権限は、ルールで認められている。説明は、まだ足りていない。「ルール上認められている」ことと、「社会に十分に説明した」ことは、同じではない。

出典

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記事番号 2026-10-03-05 誤りの指摘と訂正の記録