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一次資料の最終確認 2026年10月28日

NOISE報道の見出し

タイムズカーの見舞金3,000円は安すぎるセレクトラ

SIGNAL答え

3,000円は、名前や住所が漏れた事件(Yahoo! BB・ベネッセ)の見舞金500円の6倍で、判決の慰謝料の範囲に入る。ただ、今回はなりすましに使われうる免許証などの画像が漏れ、その流出を扱った判決は今回の調べでは見つからず、これまでの相場が当てはまるかは分からない。

範囲タイムズの見舞金3,000円を、これまでの見舞金と判決の額、漏れた物の性質で比べる。悪用時の補償は最後に触れるだけ

根拠を見る出典訂正・更新

10月23日、タイムズカーを運営するタイムズモビリティは、運転免許証などの画像が外部に送られた痕跡のある利用者に、見舞金として「3,000円相当の現金または金券」を渡すと発表した。対象の画像は約146万件で、何人分かは公表されていない。

セレクトラの記事(10月24日)によると、X には「一桁足りない」など安すぎるという投稿が出た一方、過去の判決の金額を挙げて3,000円を妥当とみる投稿もある。ただ、セレクトラ自身は、過去の事件とは漏れた情報の種類が違うので、金額を単純には比べられないと書く。同じ記事が紹介した時事通信の報道によると、集団訴訟(同じ被害を受けた大勢がまとまって会社を訴える裁判)への参加を呼びかける弁護士は、なりすましへの不安や被害の申告などの対応を考えると「低過ぎる」と話した。タイムズは10月23日に更新した Q&A(よくある質問への答え)で、利用者がなりすまし被害に備えてできることと、その負担などを考えて金額を決めたと説明する。会社も、なりすましのおそれが残ることは認めている。

意見が分かれるのは、名前や住所が漏れた事件の相場を、免許証の画像の流出にもそのまま当てはめてよいかだ。見舞金の金額を、名前や住所が漏れたこれまでの事件と比べると、3,000円は低くない。Yahoo! BB やベネッセの事件の見舞金500円の6倍で、判決の慰謝料(精神的な苦痛への賠償)の1,000〜5,000円の範囲に入る。ただ、今回漏れたのは、なりすましに使われうる免許証などの画像だ。その流出を扱った判決は今回の調べでは見つからず、これまでの相場が当てはまるかは分からない。会社が法的な責任を果たしたかは、見舞金とは別に、裁判で決まる。

名前や住所が漏れた事件の相場と比べれば、3,000円は低くない

名前や住所が漏れた Yahoo! BB(2004年)やベネッセ(2014年)の事件で、会社が自主的に配った見舞金は500円だった。見舞金が5,000円や1万円だった事件もある。証券会社の顧客情報を元社員が業者に売った事件や、口座のログイン情報などが取られたおそれのある事件だ(下の表)。

会社・事件 年 漏れた情報 見舞金(1人あたり)
Yahoo! BB 2004 氏名・住所・電話番号など 500円相当の金券など
ベネッセ 2014 氏名・住所・電話番号など(名簿業者に売られた) 500円分の金券など
三菱UFJ証券 2009 証券会社の顧客情報(元社員が業者に売った) 1万円相当のギフトカード
GMO インターネット 2026 利用者がサーバーに置いた情報(口座のログイン情報などが取られたおそれ) 一律5,000円(損失の補償は別)
タイムズカー 2026 免許証などの画像 3,000円相当の現金か金券

裁判で認められた慰謝料にも開きがある⁠。名前・住所・電話番号が漏れたベネッセと Yahoo! BB の事件では、判決の慰謝料は1,000〜5,000円だった。住民番号まで漏れた宇治市の件は1万円だった。エステで関心のあるコース名まで漏れた TBC の件では、二次被害(漏れた情報を悪用されて受ける被害)を受けた人に3万円が認められた。会社から先に3,000円を受け取り、二次被害が認められなかった人にも、1万7,000円が認められた。

免許証の画像は、なりすましに使われうる

見舞金が500円で、判決の慰謝料が1,000〜5,000円だった事件で漏れたのは、名前や住所だった。2023年の東京地裁判決(ベネッセ)は、名前や住所を、秘密にしておく必要性が高い情報とは言えないとした。

今回は、顔写真の載った免許証などの画像が漏れた。免許証は、銀行やカード会社が、申し込んだ人が本人かを確かめる(本人確認)ときに使う書類だ。

タイムズは10月23日の公式の発表で、想定するリスクに「なりすましによる各種申込み」を挙げた。なりすましとは、他人が本人のふりをして、カードやローンなどを申し込むことだ。お金の被害につながる。

北海道新聞の社説(10月6日)は、顔写真を基に、AIで本人の画像や動画を作るのは容易になっていると書く。警察庁は、生成AIで本人確認書類を作った例を確認している⁠。ただ、件数は書かれていない。

国は、銀行やカード会社などがオンラインで本人確認するときに、本人確認書類の画像と顔の画像などを組み合わせる方法を、2027年4月1日に廃止する。理由について警察庁などは、本人確認書類の画像を送ってもらう方法では、偽造や変造によるなりすましの危険が高いと説明している。ただ、廃止されるのは銀行やカード会社などでの本人確認の方法で、それ以外の契約でのなりすましの可能性は、タイムズも Q&A で完全には否定していない。

慰謝料を左右するのは、情報の種類と漏れ方

慰謝料の金額は、これまで何で決まってきたのか。内閣官房の「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック」は⁠、漏れた情報の中身と、どう漏れたかで金額が変わると整理している。名前や住所なら金額は比較的低く、ふつうは他人が知りえない情報まで漏れると高くなる。

この手引きに当てはめると、免許証の画像は、慰謝料が高くなる情報に入る。集団訴訟への参加を呼びかける弁護士の事務所も、免許証の画像を、名前や住所より保護の必要性が高い情報と書く。タイムズも、見舞金の対象を画像が外に送られた痕跡のある利用者に限り、名前や住所だけが漏れた人は対象にしていない。

一方、漏れ方には、慰謝料を低くする事情もある。タイムズは10月23日の発表で、画像は暗号化して保管していたので、外に送られても、すぐに中身を見られるわけではないと説明する。ベネッセの件では、情報が名簿業者(集めた個人の名簿を売り買いする業者)に売られていた。タイムズの画像は、売買されたり公開されたりした事実が、10月23日の時点で確認されていない。手引きに当てはめると、暗号化されていたことや、売買や公開が確認されていないことは、慰謝料を低くする事情になる。ただ、将来暗号が解かれる可能性も完全には否定できないと、タイムズ自身が認めている。

慰謝料が高くなる事情と低くなる事情を、それぞれどれだけ重く見るかは、免許証の画像の流出を扱う裁判で、裁判所が判断する。

言われていることを、1つずつ確かめた。

言われていること 判定 理由
3,000円は安すぎる(X の投稿・弁護士) 条件つき 名前や住所が漏れた事件の見舞金や判決の慰謝料と比べると、低くない。免許証の画像の流出を扱った判決は見つからず、これまでの相場が当てはまるかは分からない
過去の判決並みで、3,000円は妥当(X の投稿) 条件つき 名前や住所が漏れた事件の判決の慰謝料(1,000〜5,000円)の範囲に入る。ただ今回は性質の違う免許証の画像で、会社が同じ3,000円を払っていた TBC の事件では、二次被害が認められなかった人にも、判決は1万7,000円を認めた
受け取ったら、あとは自己責任にされるのでは(X の投稿) 根拠が足りない 受け取るだけで賠償を求められなくなる、と書いた資料は今回読んだ中に無い。裁判では、会社が先に配った金額も考えたうえで、慰謝料が認められてきた。ただ、「これ以上請求しない」といった内容に同意すると、請求できなくなるおそれがある。悪用で損失が出たときに会社が補償するかは、10月23日の公式の発表には書かれていない
顔写真を基に AI で本人の画像や動画を作るのは容易になった(北海道新聞の社説) 条件つき 生成AI で本人確認書類を作った例は警察庁が確認した。件数は書かれておらず、どれだけ容易になったかまでは分からない

受け取るときの同意と、悪用されたときの補償

見舞金は会社が自主的に配るお金で、受け取っても、賠償を求めることはできる。Yahoo! BB の裁判では、会社が先に送った500円分を賠償の一部の支払いとしたうえで、慰謝料が認められた。

タイムズは、見舞金の内容と渡し方を「現在検討中」としている。集団訴訟への参加を呼びかける弁護士の事務所は、受け取るときに「これ以上請求しない」といった内容への同意を求められる場合があり、同意すると追加の賠償を請求できなくなるおそれがあると書く。

セレクトラは、時事通信の報道(10月23日)を出典に、親会社のパーク24⁠が、実害が出た場合には個別に対応する方針を示していると書く。ただ、10月23日の公式の発表には、画像が悪用されて損失が出たときに会社が補償するかは書かれていない。

注

  1. 注1ベネッセの判決は、2019年(大阪高裁の差し戻し後の判決など)と2023年2月27日の東京地裁判決(慰謝料3,000円。会社が500円相当のお詫びの品を申し出たことも考えたうえでの金額)。Yahoo! BB は2007年に確定した判決で慰謝料5,000円(会社が先に送った500円分を賠償の一部の支払いとした)。宇治市は住民基本台帳のデータの流出の件、TBC はエステの申し込みの情報がネットで広まった件。内閣府経済社会総合研究所の論文(高口鉄平「パーソナルデータの経済価値」『経済分析』第209号)は、会社が自主的に払う金額には「500円等の『相場』」ができているようにも思われると書く一方、訴訟になった件や機微な情報の件では高くなることもあると書く。免許証の画像の流出を扱った判決は、内閣官房の手引きと個人情報保護委員会の資料の事例、10月2日と28日の検索の範囲では見つからなかった(判例の全件は見ていない)。
  2. 注2内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」(2026年10月)の Q63 は、慰謝料の金額は漏れた情報の中身と漏れ方で変わると整理する。
  3. 注3警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」。件数は書かれていない。本人確認書類の画像を使う本人確認の方法の廃止は、犯罪収益移転防止法の施行規則の改正(2027年4月1日施行)で、廃止の理由は警察庁ほかの意見募集の結果(2025年6月)による。
  4. 注4パーク24 はタイムズモビリティの親会社。特別損失55億円(見舞金と対応費用の合計。内訳は公表されていない)を計上する見込みとし、通期の純利益の予想を下げた(2026年10月23日)。見舞金の対象として公表された1,464,800件は画像の件数で、見舞金を受け取る人数は公表されていない。1件を1人として3,000円を掛けると約44億円になる(記事の計算で、上限の目安)。

出典

一次資料11件・報道3件・意見1件

一次資料のライブラリ 「暮らしの法律と手続き」の資料をまとめて見る →

根拠を見る(照合した記述 7か所)公開前の事実確認では、最初の照合(36か所)のうち12か所で、出典と合わない所や言い過ぎが見つかり、公開までに直した。

記事の事実の記述と、出典の該当箇所を並べた。事実確認の記録(10月28日まで)から作っている。

  1. 「10月23日、タイムズカーを運営するタイムズモビリティは、運転免許証などの画像が外部に送られた痕跡のある利用者に、見舞金として…」

    確認済みタイムズモビリティ(タイムズカー)第5報(2026年10月23日)該当箇所:第5報 2.④・5.(3)パーク24「不正アクセスに関する調査結果および今後の対応に関するお知らせ」(2026年10月23日)該当箇所:IR p.3 ④・p.4 Cセレクトラ(2026年10月24日)該当箇所:「パーク24が発表した見舞金の対象と金額」の表の注

  2. 「2023年の東京地裁判決(ベネッセ)は、名前や住所を、秘密にしておく必要性が高い情報とは言えないとした。」

    確認済み東京地裁 2023年2月27日判決(ベネッセ、裁判所の判例の PDF)該当箇所:p.96 第4の10(2)ア

  3. 「タイムズは10月23日の公式の発表で、想定するリスクに「なりすましによる各種申込み」を挙げた。」

    当事者の主張タイムズモビリティ(タイムズカー)第5報(2026年10月23日)該当箇所:4.お客様への影響

  4. 「内閣官房の「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック」は、漏れた情報の中身と、どう漏れたかで金額が変わると整理している。」注2「内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」(2026年10月)の Q63 は…」

    確認済み内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」(2026年10月)該当箇所:表紙・Q63(印刷 p.361〜363)

  5. 「セレクトラは、時事通信の報道(10月23日)を出典に、親会社のパーク24が、実害が出た場合には個別に対応する方針を示していると…」

    未確認セレクトラ(2026年10月24日)該当箇所:「Xでは…」の節の最後の段・出典の欄タイムズモビリティ(タイムズカー)第5報(2026年10月23日)該当箇所:第5報 5.(4)パーク24「不正アクセスに関する調査結果および今後の対応に関するお知らせ」(2026年10月23日)該当箇所:IR p.4 D

  6. 注1「ベネッセの判決は、2019年(大阪高裁の差し戻し後の判決など)と2023年2月27日の東京地裁判決(慰謝料3,000円。」「宇治市は住民基本台帳のデータの流出の件、」「内閣府経済社会総合研究所の論文(高口鉄平「パーソナルデータの経済価値」『経済分析』第209号)は、会社が自主的に払う金額には「…」

    確認済み東京地裁 2023年2月27日判決(ベネッセ、裁判所の判例の PDF)該当箇所:判決 p.97 第4の10(2)ウ高口鉄平「パーソナルデータの経済価値~把握の困難性と個人の認識~」内閣府経済社会総合研究所『経済分析』第209号(2024年)該当箇所:論文 4.3節(印刷 p.82)内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」(2026年10月)該当箇所:Q63 ア

  7. 注4「パーク24 はタイムズモビリティの親会社。特別損失55億円(見舞金と対応費用の合計。内訳は公表されていない)を計上する見込みと…」

    暫定パーク24「特別損失の計上および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」(2026年10月23日)該当箇所:1.特別損失の計上・2.業績予想の⁠修正の表

出典の該当箇所まで示せる記述だけを載せている。誤りに気づいたらcontact@instrsignal.com へ。

注1

ベネッセの判決は、2019年(大阪高裁の差し戻し後の判決など)と2023年2月27日の東京地裁判決(慰謝料3,000円。会社が500円相当のお詫びの品を申し出たことも考えたうえでの金額)。Yahoo! BB は2007年に確定した判決で慰謝料5,000円(会社が先に送った500円分を賠償の一部の支払いとした)。宇治市は住民基本台帳のデータの流出の件、TBC はエステの申し込みの情報がネットで広まった件。内閣府経済社会総合研究所の論文(高口鉄平「パーソナルデータの経済価値」『経済分析』第209号)は、会社が自主的に払う金額には「500円等の『相場』」ができているようにも思われると書く一方、訴訟になった件や機微な情報の件では高くなることもあると書く。免許証の画像の流出を扱った判決は、内閣官房の手引きと個人情報保護委員会の資料の事例、10月2日と28日の検索の範囲では見つからなかった(判例の全件は見ていない)。

東京地裁 2023年2月27日判決(ベネッセ、裁判所の判例の PDF)出典の一覧へ高口鉄平「パーソナルデータの経済価値~把握の困難性と個人の認識~」内閣府経済社会総合研究所『経済分析』第209号(2024年)出典の一覧へ内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」(2026年10月)出典の一覧へ

注2

内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」(2026年10月)の Q63 は、慰謝料の金額は漏れた情報の中身と漏れ方で変わると整理する。

内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」(2026年10月)出典の一覧へ

注3

警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」。件数は書かれていない。本人確認書類の画像を使う本人確認の方法の廃止は、犯罪収益移転防止法の施行規則の改正(2027年4月1日施行)で、廃止の理由は警察庁ほかの意見募集の結果(2025年6月)による。

注4

パーク24 はタイムズモビリティの親会社。特別損失55億円(見舞金と対応費用の合計。内訳は公表されていない)を計上する見込みとし、通期の純利益の予想を下げた(2026年10月23日)。見舞金の対象として公表された1,464,800件は画像の件数で、見舞金を受け取る人数は公表されていない。1件を1人として3,000円を掛けると約44億円になる(記事の計算で、上限の目安)。

パーク24「特別損失の計上および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」(2026年10月23日)出典の一覧へ

記事番号 2026-10-28-04 誤りの指摘と訂正の記録

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