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NOISEよくある受け取り方

家賃の値上げは、​飲むか​出ていくかしかない

SIGNAL答え

普通の​借家なら​値上げに​応じなくていい。​合意か​裁判の確定で​決まるまで、​元の家賃を​払えば足りる。

STRUCTUREこの記事の構造

値上げの通知 = ​お願い

合意なし → ​元の条件が続く

値上げの通知は​「提案」⁠にすぎない

「〇月より賃料を改定します」という書面は、法的な拘束力を持つ決定ではない。貸主側からの「条件変更の打診(お願い)」にすぎない。

応じなくても、すぐ退去にはならない
値上げに応じないことだけを理由に、借主を強制的に退去させる権利は、貸主側に無い。

日本の賃貸のルール(借地借家法)
住む権利は生活の基盤として強く守られている。合意が成立しない限り、それまでの契約条件がそのまま続く。

まずやること3つ

① これまでの家賃を、期日どおりに振り込む
納得できないからと支払いを止めると「家賃滞納」になり、借主側の債務不履行になる。これだけは避ける。

② やり取りをメールか書面に限る
口頭や電話の交渉は、言った言わないの争いを生む。「正確な記録を残すため」と伝え、電話や対面を避ける。

③ 感情ではなく、事実と法律で伝える
「生活が苦しい」「高すぎる」という訴えは、交渉の力にならない。事情と事実を整理し、法律の根拠を添えた文面にする。生成AIに事情と事実を入力すれば、筋の通った下書きを作れる。

新宿の住宅街の通り
写真:Real Estate Japan/Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

借主を​守る3つの法的な根拠

① 協議がまとまらないときの旧家賃の支払い —— 借地借家法 第32条第2項
建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の借賃を支払えば足りる。
つまり、裁判で決まらない限り、自分が妥当と考える額(=これまでの家賃)を払っていれば、法的にも契約上も問題は生じない。ただし、裁判で値上げが正当と確定すると、払っていなかった差額に年10%の利息を付けて払う。
定期借家で家賃の改定の特約がある契約は、この仕組みの外になる(借地借家法38条9項)。

② 値上げ拒否を理由にした追い出しは成り立たない —— 借地借家法 第28条
貸主からの更新拒絶や解約の申し入れには、客観的な「正当の事由」が要る。
「値上げに応じないこと」は、正当な事由として認められない。期日までに合意に至らなければ、契約はそれまでと同じ条件で自動的に更新される(法定更新)。

③ 口座の閉鎖や受け取り拒否への対応 —— 民法 第494条第1項(弁済供託)
債権者が受け取りを拒んだときなどは、法務局に供託して債務を免れることができる。
貸主が「値上げ後の家賃でなければ受け取らない」と振込口座を閉じた場合でも、旧家賃を供託すれば、家賃滞納の不利益は生じない。

値上げの理由に対して​確かめること

貸主側が値上げの理由に挙げる「管理コストの上昇」「物価高騰」に対しては、物件の管理状態を確かめる。

前提 —— 民法 第606条第1項(賃貸人の修繕義務)
賃貸人は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負う。

① 共用部の不備を記録する
雑草の放置、共用灯の切れ、ゴミ置き場の汚れなど、管理が行き届いていない状態を写真で残す。

② 専有部の設備の劣化を記録する
10年以上経ったエアコン、水回りの不具合などを記録する。

③ 主張を組み立てる
「管理コストの上昇を理由に値上げを求める一方で、基本的な管理・修繕の義務が果たされていない」という矛盾を示し、値上げの見送りと、設備の修繕・清掃を求める。

現実的な4つの着地点

交渉の展開は、おおむね次の4つに分かれる。

A: 値上げの撤回・据え置き(最も多い)
借主が法律(借地借家法32条2項)と証拠を示して筋道立てて断れば、不動産会社や貸主は時間と費用を考え、旧家賃のまま据え置くことが多い。

B: 設備の改善と引き換えの妥結
据え置きの代わりに、古い設備の交換や清掃を約束させて手を打つ。

C: 少額の歩み寄り(提示額の3〜5割)
穏便に済ませたい場合は、貸主の提示額の3〜5割程度の増額で合意する。

D: 調停・裁判(ごくまれ)
周辺の相場と比べて現在の賃料が極端に安い場合にだけ、起こりうる。貸主側にも弁護士費用や鑑定費用がかかるため、小さな値上げ幅では割に合わず、実際に起こることは少ない。

最後に

物価高が続くなか、管理会社も大家も商売である以上、値上げをしたいのは当然だ。値上げを求めるのが相手の権利であるように、「値上げの通知はお願いにすぎない」と知ったうえで対応を考えるのも、借主の当然の権利だ。

出典

訂正(2026年9月25日):裁判で値上げが正当と確定した場合に、払っていなかった差額に年10%の利息が付くこと(借地借家法32条2項ただし書き)と、定期借家で家賃の改定の特約がある契約はこの仕組みの外になることを補いました

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