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NOISE報道の見出し

赤ペンの紙切れ1枚で、家族は1円ももらえない

SIGNAL答え

遺言が有効でも、取り分がゼロになる相続人はきょうだいだけだ。配偶者・子・親は1年以内なら遺留分を請求できる。

出典訂正・更新

全財産を和歌山県田辺市に寄付すると赤ペンで書かれた野崎幸助さんの遺言は、効力があると確定した。だが、訴えた兄など親族4人に何も残らない。理由は、民法が兄弟姉妹に遺留分(最低限の取り分)を認めないことにある。この件では、遺言が無ければきょうだいが遺産の4分の1を分けるはずだった。

STRUCTUREこの記事の構造

赤ペンでも自書と押印があれば有効

民法は遺留分を兄弟姉妹に認めない

きょうだいの取り分は4分の1からゼロへ

配偶者・子・親は最低限の取り分を請求できる

遺贈を知った時から1年で請求できなくなる

出典訂正・更新

兄など親族4人に遺留分は無い

野崎さんの死後、兄など親族4人が2020年に遺言書の無効確認を求めて提訴した。一審の和歌山地裁は2024年6月21日に請求を棄却し、二審の大阪高裁も2025年9月に支持した。最高裁は9月30日付で親族側の訴えを退け、この判断が確定した。

遺言があっても、一部の相続人は金銭を請求できる。請求できる人を、民法1042条1項は「兄弟姉妹以外の相続人」に限っている。これが遺留分で、きょうだいは入らない。2020年からの裁判では、遺言を本人が書いたかどうかだけが争われた。

赤ペンでも本人が書けば有効

自分の手で全部書く遺言(自筆証書遺言)の要件は、民法968条1項が定めている。全文と日付と氏名を自分で書き、印を押すこと。用紙や書式の体裁は要件ではない。

この遺言書の日付は2013年2月8日だった。署名に加えて「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」などと赤ペンで記されていた。和歌山地裁は、筆跡と、生前の野崎さんが赤ペンをよく使っていた点を挙げている。野崎さんが長年、田辺市などに寄付してきたこととも矛盾しないとして、本人が書いたものと判断した。

あなたの親が全財産を市に寄付したら、取り分はゼロ?
写真:Vanquish0/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

遺言が無ければ配偶者が4分の3だった

遺言があれば、法定相続分と違う分け方を本人が決められる。民法890条は、配偶者が常に相続人になると定めている。900条3号は、配偶者と兄弟姉妹が相続人のとき、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1と定めている。

この件でも、遺言書が無ければ配偶者が4分の3、きょうだいが4分の1を相続していた。判決によると、野崎さんの遺産は2019年7月時点で約15億円だった。野崎さんが書いた1枚の紙によって、きょうだいの取り分は4分の1からゼロになった。

子や親は1年以内なら請求できる

子・配偶者・親には、遺言があっても遺留分が残る。親の遺留分は、子がいない場合に限られる(民法889条1項1号)。遺留分の金額は、民法1042条2項の計算で決まる⁠。

遺留分の金額 = 遺産の2分の1 × 自分の相続分

親などだけが相続人のときは、2分の1が3分の1になる。受け取れるのは遺産そのものではなく、それに相当する金銭だ(民法1046条1項)。

請求には期限がある。相続の開始と遺贈(遺言で財産を渡すこと)があったことを知った時から1年だ(民法1048条)。1年を過ぎると、配偶者も子も親も請求できなくなる。遺言があったことを知らないままでも、相続開始から10年が過ぎれば請求できなくなる(同条)。

2013年2月8日付の1枚の紙を野崎さん本人の遺言とする判断は、最高裁の決定で確定した。2020年に始まった兄など親族4人の裁判は、これで終わった。田辺市は遺産をためておく方針で、使い道は今後決めるとしている(関西テレビ、2024年6月)。市が受け取る金額は明らかになっていない。

注

  1. 注1正確には、計算の基礎となる財産は、相続開始の時の財産に生前の贈与を足し、債務の全額を引いた金額だ(民法1043条1項)。請求できる金額は、そこから自分が受け取った遺贈や相続分を引いた金額になる(同1046条2項)。

出典

一次資料1件・報道2件

一次資料のライブラリ 「暮らしの法律と手続き」の資料をまとめて見る →

注1

正確には、計算の基礎となる財産は、相続開始の時の財産に生前の贈与を足し、債務の全額を引いた金額だ(民法1043条1項)。請求できる金額は、そこから自分が受け取った遺贈や相続分を引いた金額になる(同1046条2項)。

記事番号 2026-10-03-02 誤りの指摘と訂正の記録