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NOISE報道の見出し
SIGNAL答え
2026年度の年金
厚生労働省は
物価との差1.3ポイントは、編集部の計算では2つに分けられる。1つは、年金の伸びを抑える決まり(マクロ経済スライド)で引いた分。もう1つは、改定に使う給料の伸びが物価より低かった分(以下、給料の分)だ。共同通信は本文で「支給額を抑制する仕組みを適用するため」と、決まりを理由に挙げる。ただ、2026年度の差では給料の分のほうが大きい。
結論から言えば、2026年度に決まりで引いた分は0.2ポイントで、残る1.1ポイントが給料の分だ。この回では、年金額の決まり方と差の内訳、年金がいつ物価に近づくかを確かめる。
年金の改定に使う給料の伸びには、2〜4年度前の実質賃金が反映される
年金額は毎年度、前の年の物価と、改定に使う給料の伸びをもとに改定される。給料の伸びが物価の伸びを上回る年は、67歳以下の人は給料の伸びに、68歳以上の人は物価に合わせる。物価の伸びが給料の伸びを上回る年は、どちらも給料の伸びに合わせる。2026年度は、物価の伸びが給料の伸びを上回った。
改定に使う給料の伸びは、物価の上がりを差し引いた給料の伸び()から出す。2〜4年度前の3年度分の実質賃金の平均に、前の年の物価の伸びと、税や保険料の割合の変化の分を足す。2026年度は次の足し算になる。
−1.1+3.2+0.0=2.1%
−1.1%は2022〜2024年度の実質賃金の平均で、3.2%は2025年の物価の伸びだ。0.0%は税や保険料の割合の変化の分になる。物価を差し引いた給料の伸びに、物価の伸びを足し戻して、物価も含めた給料の伸びにしている。
改定に使う給料の伸び2.1%は、2〜4年度前の実質賃金の平均がマイナスだった分、前の年の物価3.2%より低くなった。
年金の改定に使う実質賃金は、厚生労働省が年金の改定のために公表する数字だ。ニュースでよく見る毎月勤労統計の実質賃金や、第1回で見た、働く人全体の給料の総額で買える量とは物差しが違う。
同じ日に発表された特別児童扶養手当などは、法律で物価に合わせて改定すると決まっている。2026年度は前の年の物価どおり3.2%上がった。年金の改定には物価と給料の両方を使うため、物価どおりにならない年がある。

物価との差1.3ポイントのうち、1.1ポイントは給料の分だ
編集部の計算では、2026年度の差は次の引き算で2つに分けられる。
給料の分:3.2−2.1=1.1ポイント / 年金の改定率:2.1−0.2=1.9%
マクロ経済スライドは、給料や物価から出した改定率から、さらに差し引いて年金額の伸びを抑える決まりだ。引く分は、年金を支える働く人の数の増減と平均余命の伸びから決まる。
2025年度の改定では、働く人の数が2021〜2023年度の平均で0.1%減っていて、引く分は0.4ポイントだった。2026年度は2022〜2024年度の平均で0.1%増えていたため、引く分は0.2ポイントになった。
| 年金の改定(年度) | 前の年の物価 | 改定に |
マクロ経済スライド | 改定率 |
物価との |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年度 |
3.2% |
3.1% | ▲0.4% | 2.7% | 0.5 |
| 2025年度 |
2.7% |
2.3% | ▲0.4% | 1.9% | 0.8 |
| 2026年度 |
3.2% |
2.1% | ▲0.2% | 1.9% | 1.3 |
最後の列は編集部が引き算した数字で、単位はポイント。
給料の分は、0.1、0.4、1.1ポイントと年々大きくなった。物価が高くなった2022年度から、給料が物価の上がりに追いつかなかった分が、2〜4年遅れて年金の改定に反映された。2024年度は差0.5ポイントのうち0.4ポイント、2025年度は差0.8ポイントのうち0.4ポイントが、決まりで引いた分だった。2026年度には、給料の分が物価との差の大半を占めた。
満額の国民年金は、2025年度の月69,308円から2026年度は月70,608円になり、月1,300円増えた。編集部の計算では、前の年の物価どおりに上がっていれば月約71,526円で、実際との差は月約918円になる(実際の年金額は年額で端数を処理するため、この差額は目安)。

2〜4年度前の実質賃金の平均がプラスになる年から、年金と物価の差は縮む
2026年度の給料の伸びは、2028〜2030年度の年金の改定に反映される。毎月勤労統計の実質賃金は、2026年8月まで8か月続けて前年を上回った(8月は前年同月比1.5%増)。ただ、先に見たとおり、この数字は年金の改定に使う数字とは物差しが違い、改定には2〜4年度前の3年度分の平均を使うので、今の給料の伸びがそのまま年金の改定に反映されるわけではない。
編集部の読みでは、改定に使う2〜4年度前の実質賃金の平均がプラスになる年には、物価に合わせて改定される68歳以上の人の年金と物価の差が縮み、残る差は多くても決まりで引く分になる。
決まりが続く間は、68歳以上の人の年金では、決まりで引く分だけ差が残る。67歳以下の人は給料の伸びに合わせて改定されるので、給料の伸びが物価を大きく上回る年は、年金の伸びが物価を上回ることもある。2024〜2026年度に引かれた分は、年0.2〜0.4ポイントだった。
決まりが続く期間は経済の見通しで変わり、この資料では決まらない
年金を所管する厚生労働省の見通しでは、基礎年金の伸びを抑える決まりは、慎重な見通しで2057年度まで、成長が続く見通しなら2037年度まで続く。
基礎年金の水準は、夫婦2人の基礎年金が、現役の男性の手取りの平均に占める割合で見る。2024年度の36.2%から、慎重な見通しでは2057年度に25.5%、成長が続く見通しでは2037年度に32.6%になる。
この連載で比べている()と、エコノミストの会田卓司氏は、どちらも年金の先行きは経済に左右されると見ている。年金制度が続くことも、どちらも書いている。
今の制度のままなら、慎重な見通しでは決まりが2057年度まで続く。この見通しにどう応えるかで、財政審は制度の手直しと財源を挙げ、会田氏は経済の成長を挙げる。
財政審の答えは、制度の手直しと財源の確保だ。財政審は2024年11月29日の建議で、年金の伸びを抑える期間が長引き、基礎年金の水準が下がっていく点を課題に挙げた。そのうえで、決まりを早く終える案と、それで増える国の負担をまかなう安定した財源を、あわせて検討すべきだとする。将来世代に負担を回さないためだ。
建議は、2004年の改正のときは決まりが2023年度に終わる見込みだったが、デフレの下で決まりの発動が遅れた、とも書く。この建議は2026年度の改定より前に出たもので、最近の物価や給料の上がりで2057年度までという見通しがどう変わるかにも触れていない。
会田氏が挙げるのは、経済を成長させることだ。共著『何が日本経済を壊したのか』の第15講義では、年金の見通しは、きわめて悲観的なものだと見られる、と書く。に出した2026年6月30日の資料では、成長が続く見通し(資料では実質の1%のケース)なら、100年後の積立金は年間の支払いの20倍超になり、年金制度は強靭だとした。一方で本には、年金財政の放漫な運営は許されず、一定の規律は不可欠だとも書く。
この回で確かめた2つの資料(成長戦略会議の資料と第15講義)では、会田氏はマクロ経済スライドを名指しして、続けるべきか、何年続くかを書いていない。2026年度の改定が物価より低かったことにも触れていない。
連載で比べているもう1人のエコノミスト、永濱利廣氏は、2024年6月のレポート(「老後資金4000万円必要」に対する誤解)では、年金の改定の決まりには触れていない。
厚生労働省の年金部会は、慎重な見通しを中心に議論した。足元の経済はこれまでと違うという指摘も記録したが、基礎年金の決まりを早く終える案では意見がまとまらなかった。
決まりが続く期間は、給料の伸びが物価を上回り続けるかで変わり、年金を支える働く人の数や積立金の運用利回りにも左右される。
この資料では、決まりが何年続くかは決まらない(この回で見た2つの見通しでは2037年度から2057年度まで幅がある)。
年金の改定には、物価は1年遅れ、給料は2〜4年遅れで反映される。次の回は、日銀が金利を上げたとき、預金の金利や住宅ローン、国の借金の利払いに影響が出る時期が、なぜそれぞれ違うのかを見る。
調べ方
厚生労働省が2024年1月19日、2025年1月24日、2026年1月23日に発表した年金額改定の参考指標を比べた。前の年の物価、改定に使う給料の伸び、マクロ経済スライドの率、改定率を並べ、物価との差を給料の分と決まりの分に分けた。
差は単純な引き算で、掛け算の誤差は無視した。決まりが続く期間は、厚生労働省の2024年の財政検証の概要と年金部会の資料、財政審の建議で確かめた。
出典
- 厚生労働省
「令和8年度の 一次資料年金額改定について お知らせします」 (2026年1月23日) - 厚生労働省
「令和7年度の 一次資料年金額改定について お知らせします」 (2025年1月24日) - 厚生労働省
「令和6年度の 一次資料年金額改定について お知らせします」 (2024年1月19日) - 日本年金機構
「令和8年4月 一次資料分からの 年金額は 前年度から どのように 改定されたのですか。」 - 厚生労働省
「令和 一次資料6(2024)年財政検証結果の 概要」 (2024年7月3日) - 社会保障審議会年金部会
「社会保障審議会年金部会に 一次資料おける 議論の整理」 (2024年12月25日) - 財政制度等審議会
「令和7年度予算の 一次資料編成等に関する 建議」 (2024年11月29日) - 日本成長戦略会議
(第6回、 一次資料2026年6月30日) 資料3-1 (会田卓司氏提出) - 会田卓司・松本賢
『何が 日本経済を 壊したのか』 (ダイヤモンド社、 2026年9月。 第15講義) - 厚生労働省
「毎月勤労統計調査 一次資料令和8年8月分結果速報」 - 琉球新報
(共同通信配信) 報道「国民年金1・ 9%引き上げ 26年度、 実質は 目減り」 (2026年1月23日) - 第一生命経済研究所
永濱利廣 推計「「老後資金 4000万円必要」に対する 誤解」 (2024年6月19日) - 総務省
統計局 一次資料「消費者物価指数」の 公表予定 (e‑Stat) - 共同通信
「国民年金1・ 報道9%引き上げ」 (2026年1月23日。 OANDA Lab の 配信ページ)
一次資料のライブラリ 「物価と家計」の
根拠を見る(照合した記述 7か所)公開前の事実確認では、最初の照合(23か所)のうち7か所で、出典と合わない所や言い過ぎが見つかり、公開までに直した。
記事の事実の記述と、出典の該当箇所を並べた。事実確認の記録(10月27日まで)から作っている。
-
「厚生労働省は2026年1月23日、2026年度(4月から)の国民年金(基礎年金)を1.9%引き上げると発表した。」
確認済み厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年1月23日)該当箇所:1枚目の本文日本年金機構「令和8年4月分からの年金額は前年度からどのように改定されたのですか。」該当箇所:Q&A の回答の1段目
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「共同通信は本文で「支給額を抑制する仕組みを適用するため」と、決まりを理由に挙げる。」
未確認琉球新報(共同通信配信)「国民年金1・9%引き上げ 26年度、実質は目減り」(2026年1月23日)該当箇所:本文の1段目(OANDA の配信ページ)共同通信「国民年金1・9%引き上げ」(2026年1月23日。OANDA Lab の配信ページ)
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構造図「年金の伸びを抑える決まり → さらに0.2ポイントを引く → 2026年度の基礎年金の改定率は1.9%」
確認済み厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年1月23日)該当箇所:3枚目「令和8年度のマクロ経済スライドによる調整」
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「給料の分:3.2−2.1=1.1ポイント / 年金の改定率:2.1−0.2=1.9%」
確認済み厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年1月23日)該当箇所:3枚目「参考指標」と下の本文
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「財政審の答えは、制度の手直しと財源の確保だ。」
確認済み財政制度等審議会「令和7年度予算の編成等に関する建議」(2024年11月29日)該当箇所:印刷p.58〜59「(5)年金」①
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NEXT SIGNAL「2027年度の年金額は、例年どおりなら、総務省が2026年平均の消費者物価指数を出す2027年1月22日(総務省の公表予定)に…」
暫定総務省 統計局「消費者物価指数」の公表予定(e-Stat)該当箇所:「2026年平均(全国)」の行厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年1月23日)該当箇所:1枚目の頭厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」(2025年1月24日)該当箇所:1枚目の頭厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」(2024年1月19日)該当箇所:1枚目の頭
-
「琉球新報(共同通信配信)「国民年金1・9%引き上げ 26年度、実質は目減り」(2026年1月23日)」
未確認琉球新報(共同通信配信)「国民年金1・9%引き上げ 26年度、実質は目減り」(2026年1月23日)該当箇所:見出し・公開日時
出典の該当箇所まで示せる記述だけを載せている。誤りに気づいたら
なぜそう言える?
未確認琉球新報(共同通信配信)「国民年金1・9%引き上げ 26年度、実質は目減り」(2026年1月23日)該当箇所:本文の1段目(OANDA の配信ページ)出典の一覧へ共同通信「国民年金1・9%引き上げ」(2026年1月23日。OANDA Lab の配信ページ)出典の一覧へ
なぜそう言える?
確認済み厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年1月23日)該当箇所:3枚目「参考指標」と下の本文出典の一覧へ
なぜそう言える?
確認済み財政制度等審議会「令和7年度予算の編成等に関する建議」(2024年11月29日)該当箇所:印刷p.58〜59「(5)年金」①出典の一覧へ
財政制度等審議会
財務省に置かれた審議会。財務大臣の諮問に応じて、国の予算・決算・会計の制度などの重要事項を調べて話し合い、財務大臣に意見を述べる。
財務省設置法第6条・第7条第1項
日本成長戦略会議
内閣の日本成長戦略本部の下に置かれた会議。首相が議長、官房長官と担当大臣が副議長で、関係大臣と有識者で構成する。2025年11月4日の閣議で、本部の設置とともに説明された。
首相官邸「閣議及び閣僚懇談会議事録」(2025年11月4日、城内国務大臣の発言)
経済成長率
GDP(国内で一定期間に生み出されたモノやサービスの付加価値の総額)が、前年や前四半期と比べてどれだけ増えたか減ったかの割合。物価の動きを含む名目と、除いた実質がある。
共同通信ニュース用語解説「GDP」(コトバンク、2026年10月17日更新)
実質賃金
名目賃金指数(現金給与総額)を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で割って出す、物価の動きの影響を取り除いた賃金の指数。厚生労働省の毎月勤労統計調査が毎月出す。
厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年8月分結果速報」概況(印刷16ページ)
財政審
財政制度等審議会の略。財務省に置かれた審議会。財務大臣の諮問に応じて、国の予算・決算・会計の制度などの重要事項を調べて話し合い、財務大臣に意見を述べる。
財務省設置法第6条・第7条第1項
記事番号 2026-10-27-05 誤りの指摘と訂正の記録
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