筆者の経験と考え|約4分で読める

「男系男子を守る」と聞いて、最初は意味がよく分からなかった。女性天皇に反対という話なのか、それとも別の話なのか。気になって、男系を守るべきだと説く人たちの理屈を、一つずつたどってみたことがある。たどり着いたのは、男系か女系かの前にある問いだった。皇室の権威は、どこから来ているのか。 その答えが人によって違うから、話が噛み合わない。

女性天皇と女系天皇は別の話

先に言葉を分けておく。父方をたどると歴代の天皇につながる女性が即位するなら、それは男系の女性天皇だ。歴史上の女性天皇は8人(2人が2度即位したので10代)いて、みなこの形だった。女系は、母方を通じてしか天皇につながらない人が即位することをいう。女性天皇の子でも、父が男系で天皇につながっていれば男系になる。いまの皇室典範は第1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めていて、女性天皇も女系天皇も認めていない。

皇居の二重橋を描いた木版画(恩地孝四郎)
写真:Rijksmuseum/Wikimedia Commons(CC0)

権威の源を「父系」に置くと、男系は譲れない

男系を守る側の理屈はこうだ。父から息子へと父系をたどれる形で継いできたから、同じ王朝が続いてきた。女性からその子へ渡すと父系が別の家になり、王朝が替わる。

この見方では、権威の源は途切れない父系そのものにある。だから女系は、たとえ血がつながっていても王朝の交代になる。2026年7月に成立した皇室典範の改正も、この見方で読むと筋が通る。改正には、1947年に皇籍を離れた旧宮家の男性の男系の子孫を、皇族の養子として迎えられる仕組みが入った(10月24日から)。養子になった本人は皇位を継がず、その子孫が父系で皇統につながる形だ。

「血」に置くと、女系でも続く

一方で、母方を通じて天皇につながる人が即位したとしても、それまでの天皇との血のつながりは続く。権威の源を血縁に置くなら、女系で途切れるのは父系という目印だけで、皇統は続いていることになる。ただ、血のつながりだけを源にすると、どこまで遠い血縁なら皇統と呼べるのか、という線引きが残る。

よく持ち出されるY染色体の話も、ここで見方が分かれる。Y染色体は父から息子にだけ伝わる。ただ、男系で継いできたから同じY染色体が続いているのであって、Y染色体があるから男系でなければならない、という順番ではない。男系を重んじる側が守ろうとしているのも、血そのものより父系という形のほうだろう。それに、DNA鑑定が無かった時代は、皇室に限らず、父と子の関係は社会の決まりの上で認めるしかなかった。母と子には出産という事実がある。実の親子という意味の確かさなら、むしろ母系のほうに分がある。歴代の天皇のY染色体をDNAで確かめた調査も、公表されていない。

「神話」に置くと、女性を経ても子孫のまま

権威の源を神話に置く見方もある。皇室の祖先とされる天照大神は、女神として描かれている。この見方に立つなら、問われるのは天照大神の子孫かどうかで、女性を経ても子孫であることは変わらない。ただ、神話を権威の源にすると、神話をどこまで信じ、どう受け止めるかという、一人ひとりの信仰の問題に入っていく。

「歴史」に置くと、続いてきた形そのものが重い

もう一つは、長く続いてきたこと自体を権威とみる見方だ。男系で継いできたという事実と、その積み重ねには、制度や伝統としての重みがある。この見方に立つと、男系は「そうでなければならない」理由がなくても、変えるべきではない形になる。ただ、続いてきたことだけを理由にすると、その形が続けられなくなったときに何を守るのか、という問いが残る。

憲法は、継ぎ方を国会の法律に任せている

では、いまの日本の決まりはどうなっているのか。日本国憲法は第1条で、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基く」と定める。第2条は、皇位は世襲で、国会が議決した皇室典範の定めるところによって継ぐとしている。世襲であることは憲法が決め、どう継ぐかは、国会が変えられる法律に任されている。

男系か女系かの議論は、父系・血・神話・歴史のどれを権威の源とみるかの違いが、形を変えて表に出たものだ。どれを選んでも筋は通り、どれにも弱い所があって、どれか一つが「必然」になるわけではない。改正された皇室典範は10月24日から動き出すが、その先の継ぎ方も、国会が決める法律の中にある。皇統をどう続けるかを決めるのは、系図でもDNAでもなく、僕たちだ。

出典

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記事番号 2026-09-26-04 誤りの指摘と訂正の記録