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NOISE報道の見出し

事務員への報酬で運動員買収疑惑

SIGNAL答え

候補者が事務員に報酬を払えるのは、事前に選管へ届け出た人だけ。頼める仕事の範囲は、調べた資料では決まらない。

範囲候補者が事務員に払う場合。政党が使う事務員らとは別の枠。簗氏の件が枠の中だったかは扱わない

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STRUCTUREこの記事の構造

候補者が払う選挙運動の報酬は原則買収罪

候補者が事務員に払えるのは届け出た人だけ

2024年衆院選の事務員の上限は政令で1日1万円

事務員の仕事の範囲は調べた資料では決まらない

報酬を受け取った側も罰則の対象になる

簗和生農林水産大臣が10月14日に辞表を提出した(NHKは、道路予算をめぐる発言など、相次いで問題が指摘される中と伝えた)。また、文春オンラインは、2024年の衆院選で選挙運動に携わった事務員への報酬を「運動員買収疑惑」として報じた。候補者が事務員に報酬を払えるのは、働いてもらう前に選挙管理委員会(選管)へ届け出た人だけで、金額・人数・期間にも決まりがある。簗氏がその事務員を届け出ていたかは、10月14日の首相の会見と、NHKの記事のうちログインなしで読める冒頭の段落には出てこない。

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原則は買収罪、例外の1つが届け出た事務員

報道の言う運動員買収は、公職選挙法の買収罪のことだ。選挙運動の報酬を、法律が支払いを認めた人(197条の2の第2項から第4項)以外に払えば、原則としてこの罪になり、渡した側も受け取った側も罰せられる⁠。国会議員の質問に政府が文書で答えた答弁書(2024年12月27日)も「第二項から第四項までに規定する者に報酬を支給する場合を除き、同罪に該当する」としている。

法律が認めた例外の1つが、候補者が事務員に払う報酬だ。払うには、働いてもらう前に、文書で選管へ届け出なければならない。労務者や、政党が仕事を頼む事務員らには別の決まりがあり⁠、この記事は候補者が事務員に払う場合を扱う。

届け出た事務員にも上限がある

1日いくらまで払えるかは、政令(法律の細かい決まりを内閣が定めたもの)が上限を決めている。2024年10月の衆院選当時の基準は事務員1人1日1万円以内で、2025年6月の政令から1万5000円以内に上がった⁠。

人数は衆院小選挙区の選挙なら1日50人まで、期間は立候補の届出があった日から投票日の前日までだ⁠。

事務員に頼める仕事はどこまでか

公職選挙法197条の2第2項、政令129条、総務省の通知(2025年6月27日)、大阪府選管の届出書の様式は、どれも「選挙運動のために使用する事務員」と書くだけで、仕事の範囲を定めていない。

最高裁判所第二小法廷は1969年6月18日、選挙運動のための労務者として雇った人への支払いについて決定を出した。労務賃の名目で日当と残業代にあたる金額を払い、領収証を取って選管に報告した場合でも、その人に投票の依頼や勧誘を頼み、その報酬として払ったのなら、選挙運動者への金銭のに当たる⁠という判断だ。この決定は労務者として雇った人への支払いについての判断で、届け出た事務員への支払いについては判断を示していない。

候補者が事務員に払えるのは、届け出た人に、上限・人数・期間の中で払う分だ⁠。ただ、頼める仕事の範囲は、調べた資料では決まらない。報じられた支払いが法律に反したかは、捜査機関と裁判所が判断する。

調べ方

  • 報酬の金額を決める政令(公職選挙法施行令)の129条を e-Gov 法令検索で版ごとに開き、2016年6月19日から2026年9月24日までに施行された33の版すべてで、事務員の報酬・労務者の日当(基本日額)・宿泊料を並べた。数字は資料の値のままで、推計はしていない(注4の250人は50人×5の掛け算)。
  • 2024年10月27日投票の衆院選の基準は2024年7月19日施行の政令で、引き上げは2025年6月28日施行の政令と総務省通知 総行選第70号で確かめた。実際の最高額は栃木県選管の告示第27号と議案第1号で確かめ、ほかの選管は見ていない。
  • 政府の解釈は衆議院 答弁第76号と参議院 答弁第10号、労務賃の名目で払った報酬の扱いは最高裁 昭和44年6月18日決定で確かめた。事務員の仕事の範囲の定めは、本文の4つの資料(様式は記載例も)で探したが無かった。
  • 10月15日朝に、はてなブックマークと検索の結果に出た簗氏をめぐる大手の見出しのうち、見出しを確かめられた6本を並べた。事務員への報酬に触れたのは1本で、誰にいくらまで払えるかに触れた見出しは無かった。
  • 届出の有無は、10月14日の首相の会見(全文)と、NHK の10月9日・14日の記事(ログインなしで読める冒頭の段落)で探した。文春オンラインは見出しだけを見た。

注

  1. 注1選挙運動をしたことの報酬として選挙運動者に金銭を渡すと、3年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金になる(公職選挙法221条1項1号・3号)。渡したのが候補者本人、選挙運動を総括主宰した者、出納責任者なら、刑の上限は4年、罰金の上限は100万円に重くなる(同条3項)。受け取った人も罰則の対象になる(同条1項4号)。最高裁の決定は、同条1項1号の選挙運動者への金銭の供与に当たるとした。
  2. 注2労務者の報酬は、日当(基本日額)1万円以内と、その5割以内の残業代で、届出は必要なく、人数と期間の定めも政令に無い(公職選挙法197条の2第1項、政令129条1項2号)。政党が仕事を頼む事務員らは第5項の届出の対象外で、金額は政令が直接定めている(公職選挙法197条の2第3項・第4項、政令129条5項・6項)。事務員と同じ条文に並ぶ車上運動員(選挙カーの上で投票を呼びかける人)、手話通訳者、要約筆記者(話を要約して文字で示す人)は、事務員と同じく届出が必要で、上限は2024年10月の衆院選当時が1人1日1万5000円以内、2025年6月の政令から2万円以内。手話通訳者は、政見放送の録画のときだけ、報酬を払う前に届け出ればよい(政令129条7項)。
  3. 注32025年の改正後の基準が使われるのは、施行後に初めて公示された参議院通常選挙の公示日以後に、日程が公に示された選挙からだ(総務省通知 総行選第70号)。2024年10月の衆院選には、改正前の基準が使われた。2016年6月19日から2026年9月24日までに施行された政令の33の版を比べると、金額が変わったのは2025年6月28日施行の改正だけだった。引き上げの理由として、同じ通知は、与野党が設けた「選挙運動に関する各党協議会」からの要請と物価の変動を挙げている。労務者の日当(基本日額)1万円は33の版のどれでも変わらず、据え置いた理由は政令にも通知にも書かれていない。実際の最高額は選挙を管理する選管が決め、確かめた栃木県選管の最高額は政令と同じ金額だった。
  4. 注4期間は、立候補の届出があった日から、選挙の期日(投票日)の前日まで(公職選挙法197条の2第2項)。1日50人は、衆議院小選挙区・参議院・都道府県知事の選挙で、事務員など4つの職種を合わせた人数(政令129条3項1号)。期間全体を通じて候補者が届け出られる人の数は、この人数の5倍(250人)までになる(政令129条8項)。
  5. 注5交通費や宿泊代の実費は、報酬とは別の決まり(実費弁償)で、どの職種にも当てはまらない手伝いの人も受け取れる。2024年10月の衆院選当時の基準は、宿泊料が1泊1万2000円、弁当料が1日3000円、茶菓料が1日500円で、2025年6月の改正後は宿泊料が1泊2万3000円、弁当料が1日4500円、茶菓料が1日1000円。交通費は実費で払われる。

出典

一次資料11件・報道2件・意見1件

一次資料のライブラリ 「政治と制度」の資料をまとめて見る →

注1

選挙運動をしたことの報酬として選挙運動者に金銭を渡すと、3年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金になる(公職選挙法221条1項1号・3号)。渡したのが候補者本人、選挙運動を総括主宰した者、出納責任者なら、刑の上限は4年、罰金の上限は100万円に重くなる(同条3項)。受け取った人も罰則の対象になる(同条1項4号)。最高裁の決定は、同条1項1号の選挙運動者への金銭の供与に当たるとした。

注2

労務者の報酬は、日当(基本日額)1万円以内と、その5割以内の残業代で、届出は必要なく、人数と期間の定めも政令に無い(公職選挙法197条の2第1項、政令129条1項2号)。政党が仕事を頼む事務員らは第5項の届出の対象外で、金額は政令が直接定めている(公職選挙法197条の2第3項・第4項、政令129条5項・6項)。事務員と同じ条文に並ぶ車上運動員(選挙カーの上で投票を呼びかける人)、手話通訳者、要約筆記者(話を要約して文字で示す人)は、事務員と同じく届出が必要で、上限は2024年10月の衆院選当時が1人1日1万5000円以内、2025年6月の政令から2万円以内。手話通訳者は、政見放送の録画のときだけ、報酬を払う前に届け出ればよい(政令129条7項)。

注3

2025年の改正後の基準が使われるのは、施行後に初めて公示された参議院通常選挙の公示日以後に、日程が公に示された選挙からだ(総務省通知 総行選第70号)。2024年10月の衆院選には、改正前の基準が使われた。2016年6月19日から2026年9月24日までに施行された政令の33の版を比べると、金額が変わったのは2025年6月28日施行の改正だけだった。引き上げの理由として、同じ通知は、与野党が設けた「選挙運動に関する各党協議会」からの要請と物価の変動を挙げている。労務者の日当(基本日額)1万円は33の版のどれでも変わらず、据え置いた理由は政令にも通知にも書かれていない。実際の最高額は選挙を管理する選管が決め、確かめた栃木県選管の最高額は政令と同じ金額だった。

注4

期間は、立候補の届出があった日から、選挙の期日(投票日)の前日まで(公職選挙法197条の2第2項)。1日50人は、衆議院小選挙区・参議院・都道府県知事の選挙で、事務員など4つの職種を合わせた人数(政令129条3項1号)。期間全体を通じて候補者が届け出られる人の数は、この人数の5倍(250人)までになる(政令129条8項)。

注5

交通費や宿泊代の実費は、報酬とは別の決まり(実費弁償)で、どの職種にも当てはまらない手伝いの人も受け取れる。2024年10月の衆院選当時の基準は、宿泊料が1泊1万2000円、弁当料が1日3000円、茶菓料が1日500円で、2025年6月の改正後は宿泊料が1泊2万3000円、弁当料が1日4500円、茶菓料が1日1000円。交通費は実費で払われる。

労務者

選挙運動のために使う人のうち、選挙運動そのものはしない人。法律は「選挙運動に従事する者」と分けて、選挙運動のために使用する労務者と書く。選挙運動の報酬ではなく、作業への報酬(日当など)を受け取れ、選管への届出は必要ない。

公職選挙法197条の2第1項・第5項、公職選挙法施行令129条1項2号

供与

金銭や物を相手に渡すこと。公職選挙法の買収罪の条文で使われる語で、選挙運動の報酬として金銭を渡すことも含む。

公職選挙法221条1項1号・3号

記事番号 2026-10-15-01 誤りの指摘と訂正の記録