約3分で読める
SIGNAL答え
逮捕の
2026年
SERIESシリーズ
逮捕の理由だけでは、他国への武力行使は合法にならない。国連憲章の例外にも当てはまりにくく、違法だとみる根拠は強い。ただし、裁判所の判決で決まった話ではない。
シリーズ「トランプとベネズエラ」(全3回)
- ① トランプのベネズエラ攻撃、結局なんだったのか
- ② マドゥロを逮捕するためなら、ベネズエラを攻撃していいのか(この記事)
- ③ ベネズエラ攻撃、日本には関係ない話なのか
STRUCTUREこの記事の構造
米国は
実際には
国連憲章は
主な
マドゥロの評価と
米国は「警察の仕事に軍が協力した」と説明した
米国の国連代表は安全保障理事会で、今回の作戦を、犯罪の容疑者を捕まえる法執行(警察や検察の仕事)に軍が協力したものだと説明した。単純な「戦争」ではない、という立場だ。米司法省の法制局も作戦の前、2025年12月23日付で、ベネズエラでの法執行を軍が支える作戦についての意見書を出していた。
米国はほかに、麻薬取引などが米国と地域の安全を脅かしていることと、2024年のベネズエラの選挙を踏まえてマドゥロを大統領として扱わないことも、理由に挙げた。
なお、起訴は検察が罪を問うことで、裁判で有罪が決まったこととは違う。

国連憲章は、武力行使を原則として禁じている
しかし国際法では、米国内で罪を問えるかとは別の問題が生じる。
国連憲章2条4項は、他国の領土や政治的な独立に対する武力行使を、原則として禁止している。憲章が認める主な例外は2つだ。国連安全保障理事会が武力を使うと決めた場合と、武力攻撃を受けたときの自衛権(個別的・集団的)だ。
米国の3つの理由は、例外に当てはまりにくい
- 逮捕:米国の法律で罪を問う理由で、他国の領土で武力を使ってよい理由とは別だ。
- 麻薬:麻薬の流入を問題にしても、それだけでベネズエラから米国への「武力攻撃」があったことにはならない。
- 選挙:マドゥロを大統領と認めるかどうかは、他国の領土や独立を武力で侵してはいけないという決まりを外す理由にならない。
安保理がこの作戦を認めた決議も見当たらない。国連事務総長は1月5日、1月3日の米軍の行動について「国際法のルールが尊重されなかった」と深い懸念を示した。
それでも、裁判で決まった話ではない
ただし、国際裁判所が今回の作戦について判決を出したわけではない。違法だとみる根拠は強いが、裁判で確定した事件ではない。
安保理で米国の責任を問う決議を出そうとしても、常任理事国の米国が反対すれば決まらない。違法だとみる声が強くても、それを決めて罰する場所は限られている。
政権の評価と、手段の合法性は別の問い
マドゥロ政権が独裁的だったか。
米国が軍事力を使ってマドゥロを排除してよかったか。
これは別の問いである。結果が望ましいかどうかだけで、手段の合法性は決まらない。
日本の家計への直接の影響は小さい。2025年に日本が輸入した原油は、量で94.0%が中東からだった(JETRO)。日本の立場への影響は、「ベネズエラ攻撃、日本には関係ない話なのか」で書いた。
出典
- 米司法省
「Nicolás 一次資料Maduro Moros and 14 Current And Former Venezuelan Officials Charged With Narco‑Terrorism, Corruption, Drug Trafficking and Other Criminal Charges」 (2020年3月26日) - 国連トルコ事務所
「UN 一次資料Security Council divided as Venezuela crisis deepens」 (2026年1月6日、 米代表の説明) - 外務省
「ベネズエラ基礎データ」 一次資料 - 国連広報センター
「国連憲章テキスト」 一次資料(第2条4項、 第39条、 第42条、第51条) - 国連インド事務所
「Secretary‑General: 一次資料‘Power of Law’ Must Prevail in Venezuela」 (2026年1月5日の 発言、 1月12日掲載) - 米司法省
法制局 一次資料「Proposed War Department Operation to Support Law Enforcement Efforts in Venezuela」 (2025年12月23日付。 法制局の 意見書の一覧) - 日本貿易振興機構
(JETRO) 一次資料「日本は 引き続き中東と アフリカから 資源を 輸入、 2025年貿易統計」 (2026年2月13日、 貿易統計の解説)
一次資料のライブラリ 「安全保障と
根拠を見る(照合した記述 6か所)公開前の事実確認では、最初の照合(10か所)のうち1か所で、出典と合わない所や言い過ぎが見つかり、公開までに直した。
記事の事実の記述と、出典の該当箇所を並べた。事実確認の記録(10月5日まで)から作っている。
-
「2026年1月3日、米軍はベネズエラの首都カラカスを中心に軍事施設などを攻撃し、マドゥロ大統領夫妻を拘束した」構造図「実際には他国の領土で軍事力を使った」
確認済み国連トルコ事務所「UN Security Council divided as Venezuela crisis deepens」(2026年1月6日、米代表の説明)
-
「米司法省の法制局も作戦の前、2025年12月23日付で、ベネズエラでの法執行を軍が支える作戦についての意見書を出していた」
-
「米国はほかに、麻薬取引などが米国と地域の安全を脅かしていることと、2024年のベネズエラの選挙を踏まえてマドゥロを大統領として…」
確認済み国連トルコ事務所「UN Security Council divided as Venezuela crisis deepens」(2026年1月6日、米代表の説明)
-
「国連憲章2条4項は、他国の領土や政治的な独立に対する武力行使を、原則として禁止している」構造図「国連憲章は武力行使を原則禁止」
確認済み国連広報センター「国連憲章テキスト」(第2条4項、第39条、第42条、第51条)該当箇所:第2条4
-
「安保理がこの作戦を認めた決議も見当たらない」
確認済み国連トルコ事務所「UN Security Council divided as Venezuela crisis deepens」(2026年1月6日、米代表の説明)
-
「安保理で米国の責任を問う決議を出そうとしても、常任理事国の米国が反対すれば決まらない」
確認済み国連広報センター「国連憲章テキスト」(第2条4項、第39条、第42条、第51条)該当箇所:第27条3
出典の該当箇所まで示せる記述だけを載せている。誤りに気づいたら
なぜそう言える?
確認済み米司法省 法制局「Proposed War Department Operation to Support Law Enforcement Efforts in Venezuela」(2025年12月23日付。法制局の意見書の一覧)出典の一覧へ
なぜそう言える?
確認済み国連トルコ事務所「UN Security Council divided as Venezuela crisis deepens」(2026年1月6日、米代表の説明)出典の一覧へ
なぜそう言える?
確認済み国連広報センター「国連憲章テキスト」(第2条4項、第39条、第42条、第51条)該当箇所:第2条4出典の一覧へ
なぜそう言える?
確認済み国連トルコ事務所「UN Security Council divided as Venezuela crisis deepens」(2026年1月6日、米代表の説明)出典の一覧へ
なぜそう言える?
確認済み国連広報センター「国連憲章テキスト」(第2条4項、第39条、第42条、第51条)該当箇所:第27条3出典の一覧へ
記事番号 2026-10-04-04 誤りの指摘と訂正の記録

について


