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国の借金は過去最大で、重くなる一方だ

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物価高で国の借金が軽くなる分は、1,132兆円の現預金を持つ家計が払っている。

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STRUCTUREこの記事の構造

物価が上がり、値上がり込みの稼ぎが膨らむ

国の借金の重さが1年で7.7ポイント下がった

預金は銀行と日銀を通って国に貸される

預金の金利は、物価の上がり方に届かない

預金で買える量が毎年減っていく

物価が上がると、国の借金は軽くなり、預金は目減りする。預金は銀行と日銀を通って国に貸されていて、預金者の損と国の得は、同じお金の流れの両端にある。だが、各国の経済を点検する国際機関IMFの見通しでは、2035年から国の借金はふたたび重くなる。そのときの代金も、物価の上昇・増税・社会保障の削減のどれかの形で、暮らしに回ってくる。

銀行に預けておくだけで、損してるの?

損している。預金の金利が、物価の上がり方に届いていないからだ。メガバンクの普通預金の金利は0.4%で、11月2日から0.5%になる。家計が買う物の値段(消費者物価、生鮮食品を除く)は、8月に前年より1.7%上がった。

いまの金利で100万円を1年預けると、利息は税金が引かれる前で4,000円だ。物価が8月の伸びのまま上がれば、いま100万円で買える物は、1年後に101万7,000円出さないと買えないということだ。

税を引く前でも、預金で買える量は年に約1.3%減る計算だ。通帳の数字は減らない。減るのは、その数字で買える量だ。日銀は、物価の伸びが今年度の後半から2%をはっきり上回ると見込んでいる。物価の伸びが8月のままでも、金利が0.5%になる11月以降、目減りは年約1.2%で、止まらない。

日本銀行本店
写真:Syced/Wikimedia Commons(CC0)

国の借金、こんなに多くて大丈夫なの?

2026年現在、昨年と比べ国の借金負担は軽くなっている。借金の金額は増えても、値上がり分も込みの日本全体の稼ぎが、それより速く膨らんでいるからだ。年収に対するローン残高の倍率にたとえると、日本はおよそ年収の2倍の借金を抱えている。年収が借金より速く増えれば、残高が増えても倍率は下がる。稼ぎの膨らみが借金を軽くするこの力を、ここでは追い風と呼ぶ。

物の値段が上がれば、同じ量を売っても売上の金額は増える。日本全体の稼ぎも、値上がり分だけ金額が膨らむ。物価が上がったからといって、借金の残高が勝手に増えるわけではない。

IMFの推計では、稼ぎに対する借金の割合は、2025年に214.5%から206.8%へ下がった。1年で7.7ポイント軽くなった。利払いも、いまは重くない。IMFの表では、2025年の国などの利払いは、日本全体の年間の稼ぎの1.5%分だ。国などが持つお金の資産(年金の積立金、外国の債券など)からは、1.3%分の利子が入る。差し引くと、正味の支払いは0.2%分にすぎない。

重さを左右しているのは借金の多さではなく、借金と稼ぎのどちらが速く増えるかだ。

物価が上がって、得をしているのは誰?

得をしているのは国で、払っているのは預金者だ。家計が持つ現金と預金は、6月末で合わせて1,132兆円ある(日銀の速報)。預金は銀行に集まり、銀行はそれで国債(国の借金の証文)を買ったり、日銀に預けたりする。日銀も国債を持つ。

家計の預金は、銀行と日銀を通って国に貸されている形だ(流れを単純化している)。物価が上がると、借りた側の返す重さは軽くなり、貸した側が受け取る価値は目減りする。預金が目減りするとき、その預金を借りている国の借金も目減りしている。ただし、預金者の損と国の得が、同じ金額で向かい合うわけではない。国の側も年金の積立金などの資産から利子を受け取り、借金の利払いは借り換えのたびに少しずつしか上がらないので、どちらがどれだけかは、金利と期間と資産の持ち方で変わる。

払う人と得る人を並べると、こうなる。

払う
預金を持つ人、年金のように物価ほど増えない収入の人
得る
国、固定金利でお金を借りている人
どちらにも
給料で暮らす人、変動金利でお金を借りている人

給料で暮らす人は、賃上げが物価を上回れば得る側、届かなければ払う側に立つ。物価の分を差し引いた給料()は、2022年以降に約6%下がった(IMF)。平均で見れば、給料で暮らす人もここ数年は払う側にいた。

変動金利で借りている人は、物価高では得る側、利上げでは払う側に回る。物価高の得は、給料が物価と一緒に上がって初めて出てくる。利上げの損は、金利の見直しのたびに利息として出てくる。

つまり、物価高は増税をしないまま、預金者の負担で国の借金を軽くしている。では、円安で物価が上がるのも、同じことなのか。違う。円安や原油高で上がる物価は、家計が損をするうえに、国もあまり得をしない。

国の借金を軽くするのは、国内の稼ぐ力を強くすることだ。賃上げで散髪代が上がれば、上がった分は国内の店と働く人の稼ぎになり、日本全体の稼ぎが膨らむ。原油の値上がりでガソリン代が上がると、上がった分は原油の代金として国外へ払われる。店の値札は同じように上がっても、日本全体の稼ぎは膨らまない。

そのうえ国は、電気・ガス代の補助のような物価高対策にお金を使い、赤字を広げる。家計の損を左右するのは店の値札で、国の借金の軽さを左右するのは国内の稼ぐ力だ。円安型の物価高で上がるのは、店の値札だけ。

だから、円安型の物価高は、家計の損に見合う国の得を生まない。

金利が上がり続けたら、どうなるの?

国の利払いが膨らみ、借金を軽くしていた追い風は細る。物価高だけでは、借金から逃げ切れない。物価高が続けば、日銀は金利の大もと(政策金利)を上げる。お金を借りにくくして、物価の上がり方を抑えるためだ。日銀は9月18日、政策金利を1.0%から1.25%に上げた。

新しく借りる分の金利は、すでに上がっている。国が10年借りるときの金利は、9月1日に3%台をつけた。国は借り換えのたびに、この高い金利を払う。IMFの表から計算すると、利子収入を引いた正味の利払いは、2031年までに8倍あまりに増える。2025年は稼ぎの0.2%分だったのが、1.7%分になる。

利払いが膨らむと、稼ぎの膨らみで借金が軽くなる分は、利払いに食われて細る。借金を重くする側の力は、毎年の赤字だ。利払いを除いた国の支出が、税などの収入を上回る分をいう。

IMFが4月に示した見通しでは、2030年代の半ばに、2つの力がほぼ同じ大きさになる。細った追い風と、毎年の赤字だ。借金の重さはそこで下げ止まり、2035年からふたたび増え始める。

利上げが届く速さは、相手ごとに違う。9月の上げ幅0.25ポイントに対し、普通預金の上げ幅は11月からの0.1ポイントだ。変動金利(決まった期間ごとに見直される金利)の住宅ローンには、次の見直しを待って効く。見直しで金利が0.25ポイント上がると、残高2,000万円なら利息は年に約5万円増える(単純計算)。国の借金全体には、借り換えのたびに少しずつ、10年がかりで効く。

では、選挙では何を見ればいいのか。見るのは、減税や給付の約束の代金を、誰が払うかだ。追い風が細ると、国の借金の重さは、ほぼ毎年の赤字の大きさで動く。その大きさを決めるのが、選挙だからだ。

赤字を広げる力は2つある。1つは高齢化で、医療・介護の公的な支出は増え続ける(IMF)。もう1つは約束だ。2025年度の税収は、6年連続で過去最高だった。物価高で増えた税収は、減税や給付で返せという圧力を生み、赤字の改善を食う。

配って稼ぎを押し上げる手も、いまは効きにくい。働く世代(15〜64歳)の人口は、年約0.6%ずつ減り続けている(IMF)。値上がり分を除いた稼ぎが無理なく伸びる速さは、日銀の推計で「0%台半ばから後半」だ。

人手が増えないので、配ったお金は物を増やすより、値段を押し上げやすい。全員が得をする道は、稼ぐ力(値上がり分を除いて本当に増えた稼ぎ)を伸ばすことだけだ。それには時間がかかる。

借金がふたたび重くなったとき、家計に来る代金の形は3つある。物価高なら預金者、増税なら消費者、社会保障を削るなら受け取る人が払う。選挙で選んでいるのは、このどれで払うかだ。

自分は、どうしておけばいいの?

日本の行方を当てにいかないことだ。物価高・利上げ・円高のどれが来ても、家計が一か所で大きく崩れない形にしておく。家計は預金者であると同時に、住宅ローンなどの借り手でもある。預金が大きい人は物価高で削られ、借入が大きい人は利上げで削られる。借入がある人の最初の一歩は、預金と変動金利の借入を並べて、どちらが大きいかを知ることだ。

預金だけで借金の無い人は、物価高の側に全部を置いている。円高や利上げでは崩れないが、物価高が続くと削られ続ける。最初に確かめるのは、給料の伸びが物価の伸びに届いているかだ。

反対に、円安が続くと見てドルに寄せた形は、円高に弱い。為替は2か月足らずで逆に振れた。円は7月末に1ドル164円近くまで安くなり、9月8日に一時152円台まで戻した。この間に、ドルで持つ資産は円に直して約7%目減りした計算だ。

預金だけの形も、ドルに寄せた形も、一つの見通しに全部を賭けている点で同じだ。賭けが外れた側で、家計は大きく崩れる。致命傷にならない形とは、弱い相手が違うものを分けて持ち、一つが外れても全体は崩れない形だ。

何をどれだけ持つかは、年齢や収入、急な出費への備え、使うまでの期間で人ごとに違う。ここまでの話を、筆者が公表資料から組んだ全体図にまとめる。この図から出てくるのは配分ではなく、自分がどこに立っているかだ。

  1. 働く世代(15〜64歳)の人口が年約0.6%減る → 物が増えにくく、配ったお金は値段に流れる
  2. 物価が上がる → 預金の金利が届かず、預金で買える量が年約1.3%減る
  3. 物価が上がる → 値上がり込みで稼ぎが膨らみ、国の借金が軽くなる
  4. 家計の預金 → 銀行・日銀 → 国。預金者の損が、国の得になる
  5. 円安・原油高の物価高 → 家計は損をし、国の得は小さい
  6. 物価高が続く → 日銀の利上げ → 国の正味の利払いが2031年に8倍あまり → 追い風が細る
  7. 高齢化と減税・給付の約束 → 毎年の赤字 → 2035年から借金が再び重く → 代金は家計へ
  8. 出口: 稼ぐ力を上げ、赤字を減らす → 追い風が戻る

預金を持つ人は、2の物価高で損をする側にいる。変動金利で借りている人は、6の利上げでも損をする側に回る。給料で暮らす人は、賃上げが物価を上回るまで、損をする側にいる。

つまり今回は、国の借金が軽くなり、その分を預金を持つ家計が目減りの形で払っている。この追い風は、金利が追いつけば細る。手元では、給与明細の金額が1年前より物価の伸び(8月は1.7%)以上に増えたかを確かめればいい。届いていなければ、給料の側でも損をしている。

お金の基本をすべて見る →

出典

一次資料7件・報道7件

一次資料のライブラリ 「財政と金利」の資料をまとめて見る →

実質賃金

名目賃金指数(現金給与総額)を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で割って出す、物価の動きの影響を取り除いた賃金の指数。厚生労働省の毎月勤労統計調査が毎月出す。

厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年8月分結果速報」概況(印刷16ページ)

記事番号 2026-09-24-04 誤りの指摘と訂正の記録

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