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一次資料の最終確認 2026年10月23日訂正 2026年10月26日

SIGNAL答え

1998年から2025年まで28年間、家計等と企業の資金余剰は政府の資金不足を上回り、国内全体で余裕があった。この間の民間の資金余剰の半分以上は、金融機関も含む企業部門の分だ。今後は企業が国内投資を増やして余剰を減らしたとき、家計と政府の動きも合わせて、国内の資金で足りるかを確かめる。

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議論のきっかけ:報道の見出し

NOISE報道の見出し

衆院選が公示 高市政権どう評価毎日新聞(2026年1月27日)

資金循環統計の合計を示す「家計等」は、家計と対家計民間非営利団体を合わせた部門を指す。対家計民間非営利団体は、家計にサービスを提供する非営利団体で、家計そのものとは別である。

本文の要点を図で振り返る

STRUCTUREこの記事の構造

  • 2025年

    家計・対家計民間非営利団体17.4兆円⁠+企業24.1兆円

    黒字の合計41.5兆円

  • 41.5兆円⁠−一般政府の資金不足9.7兆円

    差し引き31.8兆円

  • 企業(金融機関を含む)

    28年間の家計等・企業黒字の半分以上

国の巨額の借金は、国内のお金でまかなえているのだろうか。国内の家計や企業に資金の余裕があれば、金融機関などを通じて国債を買う原資になる。 財務省は、が赤字になれば海外の資金に頼ることになると指摘する。ただし、海外に頼ることが、そのまま国債の買い手不足や金利急騰を意味するわけではない。国内の資金の過不足と、国債を誰が保有しているかを分けて確かめよう。

結論から言えば、これまでは国内の資金で十分にまかなえてきた。家計等と企業が生み出す年間の資金余剰(貯蓄超過)が一般政府(国・地方・社会保障基金)の資金不足を上回り、余った資金は海外への投資に回ってきた。 しかも、この28年間の民間の資金余剰の合計では、銀行や保険会社を含む「企業部門」が半分以上を占めている。

ただし、「これまで国内でまかなえてきたこと」と「今後もまかなえること」は分けて考える必要がある。財務省の()も、政府の会議で提言するエコノミストの会田卓司氏も、企業に賃上げや国内投資への支出拡大を求めている。企業が積極的にお金を使い始めた後も国内の資金で足りるのか、もし足りなくなって海外資金に頼ると何が起きるのかを、統計と計算式で確かめる。

家計と企業の余剰資金は、国債を買う原資になる

国は税収などで足りない分を、国債を発行して借りている。家計や企業が銀行などに預けた資金は、金融機関などを通じて国債の購入へと回る⁠。その資金の流れを、2025年の1年間の数字で見てみよう。

ここで比べるのは、過去の蓄積である預金残高や対外資産残高(ストック)ではなく、1年間に新たに出入りしたお金の流れ(フロー)だ。その年の収入のうち、消費や投資に使わず手元に残した分が「資金余剰(黒字)」、収入を超えて借り入れて使った分が「資金不足(赤字)」となる。

日本銀行の「資金循環統計」によると、2025年の資金余剰は家計・対家計民間非営利団体が17.4兆円、企業(銀行や保険会社を含む)が24.1兆円で、民間全体では合計41.5兆円だった。17.4兆円の内訳は家計約14.1兆円、対家計民間非営利団体約3.3兆円である。一方、同じ年の国や地方自治体など(一般政府)の資金不足は9.7兆円だった。第1回の約40兆円は、国の一般会計が年度の予算で新たに借りる金額だ。ここでは国・地方・社会保障基金の資金の過不足を2025暦年の統計で合計するため、9.7兆円を使う。社会保障基金の黒字なども差し引いた数字であり、約40兆円をそのままこの差し引きに入れることはできない⁠。

この資金の流れは、2つのステップの計算式(貯蓄投資バランスの恒等式)で見ると分かりやすい。

  • 計算式①(民間の資金余剰合計):家計・対家計民間非営利団体の資金余剰17.4兆円 + 企業の資金余剰 24.1兆円 = 民間の資金余剰合計 41.5兆円
  • 計算式②(国内の資金余剰と経常収支の恒等式):民間の資金余剰合計 41.5兆円 - 一般政府の資金不足 9.7兆円 = 残り 31.8兆円(≒経常黒字)

一般政府の1年間の資金不足(9.7兆円)を国内の民間資金ですべて穴埋めしても、国内全体では差し引き31.8兆円の資金余剰があった計算になる。

(図)

部門(2025年暦年・フロー) 1年間の資金過不足 計算式上の位置づけ・意味
①家計・対家計民間非営利団体 ⁠+17.4兆円(資金余剰) 家計・対家計民間非営利団体を合わせた1年間の資金余剰。預金などを通じて国債等の原資になる
② 企業部門(金融機関含む)⁠ ⁠+24.1兆円(資金余剰) 金融機関を含む企業部門の資金余剰。民間合計の58%を占める
③ 民間合計(①+②)⁠ ⁠+41.5兆円(資金余剰) 国内の民間全体で1年間に生み出された余剰資金の合計
④ 一般政府(国・地方・社保)⁠ ⁠▲9.7兆円(資金不足) 一般政府の1年間の資金不足。一般会計の新規国債発行額とは異なる
⑤ 海外へ回った資金(③-④)⁠ ⁠+31.8兆円(≒⁠経常黒字) 国内全体の差し引きの資金余剰。海外への純投融資に対応する
国の借金をまかなう国内資金は足りてきた 28年間、家計と企業の資金余剰が政府の赤字を上回る
写真:Suicasmo/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

経常黒字が続いていれば、国内の資金で足りている

国内の資金余剰31.8兆円は、海外に対する差し引きの投融資に対応する。海外との貿易や投資のやりとりで、受け取る金額が支払う金額を上回ることを「経常黒字」と呼ぶ。この31.8兆円は、財務省が「国際収支状況」で速報した2025年の経常黒字(31兆8,799億円)とほぼ一致する⁠。

経常黒字は、国内の貯蓄が国内の投資を上回る分に対応する。国内の資金過不足と経常収支の関係は、次のように整理できる。ただし、実際の統計には集計範囲や改定時点などによる差がある⁠。

  • 家計等の余剰+企業の余剰 > 政府の赤字 → 国内全体では資金余剰(経常黒字に対応)
  • 家計等の余剰+企業の余剰 < 政府の赤字 → 国内全体では資金不足(経常赤字に対応)

これは国内全体の差し引きの関係だ。黒字でも海外投資家は国債を買っており、経常収支だけで個々の国債を誰が買ったかまでは分からない。

これまでの統計では、国内の資金に余裕があった。金融機関を含めて数えると、1998年から2025年まで28年連続で家計等と企業の資金余剰が一般政府の資金不足を上回り、日本の経常収支も28年連続で黒字だった。金融機関を除いた企業と家計だけで数えると、28年のうち7年は一般政府の資金不足に届かない。国債(国庫短期証券を含む)の保有者を見ても、2026年6月末時点で海外投資家の保有比率は13.1%で、8割超は日銀や国内の銀行・保険会社などが保有している⁠。

これまで国の借金を国内の資金でまかなえてきたという事実認識と、将来もし経常赤字になれば海外資金に頼らざるを得なくなるという認識は、財務省も会田氏も共有している⁠。

民間の余剰資金の半分以上は、企業が蓄えたお金

国内の資金余剰の内訳に戻ると、家計より企業の割合が大きい。2025年の合計41.5兆円のうち、24.1兆円(58%)が企業の資金余剰だった。1998年から2025年までの28年間の累計でも、企業部門(金融機関を含む)が58%を占める⁠。

本来、企業はお金を借りて設備投資を行う主体だが、日本では企業の貯蓄が投資額を上回る状態が長く続いてきた。財政審は2025年5月の意見書で、日本企業はほぼ一貫して投資に回す資金より貯蓄のほうが多く、その差も諸外国に比べても大きいと指摘した⁠。会田氏も2026年3月の国会公聴会で、日本企業が賃金や国内投資を切り詰めて資金をため込んでいる現状を「異常な貯蓄超過」と呼んで問題視した⁠。

企業が手元資金をため込まず、賃上げや国内の設備投資にもっと振り向けるべきだと考えている点でも、財政審と会田氏は一致している。 財政審は2026年6月の建議で、企業の利益が株主還元ばかりに偏る構造を見直し、賃上げや人材投資、将来の市場をつくる設備投資に向かうよう制度を整える必要があると提言している⁠。

経常赤字は国全体の資金不足であり、国債の買い手不足とは限らない

日本には、これまで海外に投資して積み上げてきた対外資産がある。それでも経常赤字になれば、資金が足りなくなるのだろうか。

ここでも、過去の蓄積である「残高」と、その年の資金の出入りを分ける必要がある。対外資産の多くは民間が保有する工場や有価証券などで、政府が自由に使える現金ではない。一方、経常赤字は、その年の日本全体が海外に対して差し引きで資金を調達する状態に対応する。過去の資産を取り崩すことも、新たに海外から借り入れることも、その調達の一部になりうる。

ただし、経常赤字になっただけで、政府が国債を売れなくなる、あるいは金利が急騰するとは決まらない。 経常収支は国全体の資金過不足、国債の保有統計は国債の持ち主を示す。二つを区別し、国債の保有者や売買動向、金利もあわせて見る必要がある⁠⁠。

海外投資家の保有は、短期証券とそれ以外に分けて見る

では、国債等の13.1%を保有する海外投資家は、どのような国債を持っているのか。

日銀の資金循環統計では、2026年6月末の海外保有約150兆円のうち、「国債・財投債(財政投融資に使う国債)」が約80兆円だった。差し引き約70兆円が、満期1年以内の「国庫短期証券(T-Bill)」にあたる。短期証券を除く国債・財投債の海外保有比率は7.9%だ。短期証券とそれ以外の両方があり、海外保有分のすべてが短期の運用というわけではない⁠。

2026年6月末・時価ベース 海外投資家の保有残高 読み取れること
国債等の合計 約150兆円 国債等全体の13.1%を海外が保有
うち国債・財投債 約80兆円 短期証券を除く残高全体に占める海外保有比率は7.9%
うち国庫短期証券(T-Bill)⁠ 差し引き約70兆円 海外保有分の約半分。満期1年以内の証券

*残高は兆円単位に丸めた値であり、約70兆円は約150兆円と約80兆円の差額。保有比率とは分母が異なる⁠。*

海外投資家の目的も、一様ではない。財務省「債務管理リポート2026」は、金利上昇や長短金利差による投資妙味の改善に加え、為替変動のリスクを抑える取引を組み合わせた後の利回りの高さを挙げる。外貨を円に換え、後で交換し戻す条件も決めておく仕組みだ。短期証券との相性はよいが、無リスクの利益を保証する取引ではない。保有統計だけで、個々の投資家の目的や保有期間も決められない⁠。

海外投資家の売買動向には注意が必要な一方、国内外の投資家が異なる目的で国債を持つことは、取引が一方向に偏るのを防ぎ、市場の安定に役立つと財務省は説明する。海外保有が増えたかどうかだけで危険度を決めず、返済までの期間や売買の動向も確かめる必要がある⁠。

この先は、企業の支出が増えた後も経常黒字が残るかを見る

では、双方の期待どおりに企業が賃上げや国内投資へ積極的にお金を回し始めた後も、国内の資金だけで足りるのだろうか。

計算式②(家計等の余剰+企業の余剰-政府の赤字≒経常収支)に当てはめてみよう。企業が投資などの支出を増やせば、これまで民間の資金余剰の過半を占めてきた「企業の余剰資金」は減る。会田氏の推計でも、国の投資に促されて企業が設備投資を増やすほど、経常黒字は縮小する。そこで確かめるべきは、縮小しても経常黒字(>0)が維持されるかどうかだ。

会田氏の試算は、国の投資が企業の投資を強く誘発する想定でも、経常黒字(対GDP比2.1〜3.8%)が残るという結果だ。ただし、当該の表に対象年は明示されていない。企業の資金余剰が減っても、経済成長によって家計の貯蓄が増え、税収増によって国の赤字も縮小するためだ⁠。一方、財務省は、国債の海外投資家保有比率が上昇傾向にあるなかで、もし経常赤字に転じれば海外資金に頼ることになると警鐘を鳴らす⁠。

今後の統計では、会田氏の推計に沿った変化が起きているかを確かめる。企業の投資が増える一方、家計の貯蓄が増え、国の赤字が減ることで経常黒字が維持されれば、会田氏の試算に近い動きになる。逆に国内全体が資金不足となり経常赤字に転じれば、海外資金に頼ることになるという財務省の懸念に沿う。 ただし、経常収支は原油価格や円相場でも動く。単年度の黒字・赤字だけで、政策の効果や予測の成否を決めることはできない⁠。

最初の手がかりは、企業の資金余剰が減り始めたかを示す日銀の「資金循環統計」だ。2027年3月17日の公表で、2026年通年の数字がそろう予定となっている。

では、国が財政支出を増やしたとき、実際に企業の投資が促されて生産が増えるのか、それとも物価が上がるだけなのか。第4回では、その分かれ目となる「供給余力」を検証する。

計算式と公表時期は、別紙「今後何を見れば分かるのか」の一覧表にまとめた。

注

  1. 注1第一生命経済研究所の解説(2012年4月)の文は「家計と企業の余剰資金が国債購入にあてられれば、財政赤字分をカバーできる状況です」。財政審の建議(2014年12月、印刷1ページ)も「家計の潤沢な預金等が、金融機関を通じて、国債の安定的な消化に寄与してきた」と書く。会田氏と松本賢氏の本(第11講義)も、会社がためたお金を預かった金融機関が国債を買う、と説明している。
  2. 注2数字は、日本銀行「資金循環統計」の1年分を Instr Signal 編集部が合計したもの(2026年9月17日更新の値)。統計では、黒字を「資金余剰」、赤字を「資金不足」と呼ぶ。会社の24.1兆円には、銀行などの金融機関(日本銀行を含む)の8.1兆円が入る。日本銀行を除いて数えても、1998年から2025年まで28年すべてで、家計等と会社の黒字は一般政府の資金不足を上回る。国や地方の9.7兆円は、国の16.95兆円の不足から、年金などの基金(7.1兆円)と地方(0.1兆円)の余剰を差し引いた数字。第1回の約40兆円(40.3兆円)は、2025年度(4月〜翌年3月)の予算で決めた国の新しい借り入れの金額。この回は国内のお金で足りたかを見るので、2025年(1〜12月)の国・地方・年金などの基金を合わせたお金の出入りの差で比べた。資金循環統計の説明は、日本銀行「資金循環統計の解説」の「わが国における金融機関、法人、家計といった各部門の金融資産・負債の推移などを、預金や貸出といった金融商品毎に記録した統計」による。
  3. 注3日銀の統計で海外に回ったお金(31兆8,029億円)と、財務省の速報の経常黒字(31兆8,799億円)は、数える範囲と、数字を出した時期が少し違い、770億円の差がある。経済産業研究所の論文(1997年)は、経常黒字を「海外に対する投資・融資であり、国内の貯蓄と投資の差額」と説明している。
  4. 注4比べたのは、日銀の統計で今の区分の数字がそろう1998年から。銀行などを会社に含めずに数えると、2000・2001・2006・2008・2013・2020・2022年の7年は、家計等と会社の黒字が一般政府の資金不足に届かない。経常収支は28年すべて黒字で、いちばん小さいのは2014年の3兆9,215億円。国債の持ち主の数字は、財務省「財政総論」(財政制度等審議会 財政制度分科会の資料、2026年9月30日、印刷27ページ)の図による(もとは日本銀行の資金循環統計。国債は財投債と国庫短期証券を含む)。国内の86.9%の内訳は、日本銀行41.2%、銀行など17.8%、生命保険・損害保険会社など13.5%、公的年金と年金基金9.5%、家計1.9%、その他3.0%。
  5. 注5財務省「日本の財政関係資料」(2026年4月、印刷23ページ)の文は「我が国では、これまで政府部門の赤字を民間貯蓄の黒字が上回って経常黒字となっていますが、経常収支が赤字となった場合は海外資金に依存せざるを得なくなります。今後とも財政健全化に向けた取組が必要です。」。同じページのコラム②は「海外投資家の国債保有割合・流通市場でのプレゼンスは上昇しており、海外投資家からの財政への信認を確保する必要性が一層増しています」と書く。経常収支が赤字になったときの金利については、第一生命経済研究所の解説(2012年4月)が、海外の投資家に国債を買ってもらうことになれば、より高い金利を求められ、国の利払いが増えると心配されている、と説明している(財務省の資料の記述ではない)。会田氏の2022年の論文(経団連の21世紀政策研究所の報告書、印刷47ページ)の文は「日本の国際経常収支は黒字であり、民間投資と財政支出が過剰ではない。もし財政支出が過剰で国際経常収支が赤字であれば、海外からの借り入れが必要になり」。
  6. 注628年の合計は、日本銀行「資金循環統計」の値を Instr Signal 編集部が合計したもの(会社の黒字は約714兆円、家計等と会社の黒字は約1,221兆円)。「半分以上」になるのは、銀行などの金融機関を会社に含めて数えた場合。財務省「日本の財政関係資料」(印刷23ページ)の図の注も「企業等=非金融法人+金融機関」と同じ範囲で数え、会田氏の「企業貯蓄率」も金融機関と非金融法人を合わせた範囲で数える(日本成長戦略会議 2026年6月30日資料 65ページ)。銀行などを除いたふつうの会社(非金融法人企業)だけで数えると、2025年の黒字は16.0兆円で、家計・対家計民間非営利団体の黒字17.4兆円より少なく、家計等と会社の黒字の約48%。会田氏と松本賢氏の本(第2講義)は、もうけより多く投資する会社は収支が赤字になるとして、「儲かっているけれど、赤字を出している企業」と呼ぶ。
  7. 注7財政制度等審議会の建議(意見書。2026年6月26日、印刷47〜49ページ)。会社がもうけをため込んできた一方で、「それが必ずしも賃金上昇や国内投資の拡大に結びついてこなかった」と書く。同じ所で、中小企業では現預金が積み上がっているとし、もうけが株主への還元ばかりを増やす形を見直して、会社の内部の資金が賃金と人への投資、将来の市場をつくる投資に向かうような制度の設計が求められるとしている。2025年5月27日の建議(印刷6ページ)の文は「企業部門はほぼ一貫して貯蓄超過であり、かつ、その水準は諸外国と比べても高い」。
  8. 注8参議院予算委員会公聴会(2026年3月24日。国会が専門家などから意見を聞く場)の会議録による。会田氏は「通常の経済であれば、企業は資金を調達、借りて投資をして事業を行います」と説明し、日本の会社は「賃金や投資などの国内支出をどんどん切り詰めて」いると述べた。貯蓄超過の説明は、会田氏と松本賢氏の本(第2講義)の図の説明(投資が利益より少ない会社は、収支が黒字の「貯蓄超過」)による。
  9. 注9会田氏が日本成長戦略会議(2026年6月30日)に出した資料の推計(15ページ)。何年の値かは書かれておらず、国の投資が会社の投資をどれだけ引き出すかで場合を分けた表。引き出す力がこれまでと同じ場合(表の「成長戦略効果」1.0)は、GDPに対する割合で、会社は+3.7%、国は−3.7%、家計は+3.8%、経常黒字は3.8%。表でいちばん強く引き出す場合(2.5)は、会社は−3.3%(お金を借りて投資する)、国は−1.7%、家計は+7.1%、経常黒字は2.1%。どちらも会田氏自身の推計。会田氏は2022年の論文(印刷43ページ)でも「財政拡大でネットの資金需要が拡大した部分は、家計貯蓄率の上昇した部分で相殺され、国際経常収支の悪化はその差分で小さい」と書く。本文の、経常黒字が残るか赤字になるかで見分ける読み方は Instr Signal 編集部の読みで、財務省の資料にも会田氏の資料にも、こうした見分け方は書かれていない。経常黒字の大きさは、会社や家計のお金の使い方のほかに、原油の値段や円の動きでも変わる。第一生命経済研究所の解説(2012年4月)は、震災や円高、原油価格の高騰などで前の年に貿易収支が31年ぶりの赤字になり、経常収支の黒字幅も大きく縮んだと書く。会社の投資の動きは、財務省の法人企業統計でも見られる。
  10. 注10日本銀行「参考図表 2026年第2四半期の資金循環(速報)」(2026年9月17日、図表6-2、印刷10〜11ページ)は、2026年6月末の海外保有を国債等合計で約150兆円、国債・財投債で約80兆円とする。時価ベースで、後者の海外保有比率は7.94%。短期証券の約70兆円は、兆円単位に丸められた両残高の差から求めた概算である。財務省「債務管理リポート2026」第Ⅱ編3(印刷85・93ページ)は、投資家層の多様化による市場安定への効果、海外投資の複数の動機、通貨ベーシス・スワップ利用時のヘッジ後利回りと短期証券の親和性を説明する。同レポートの保有割合6.8%・56.3%は2025年12月末速報値であり、本文の2026年6月末の数字とは混ぜていない。国全体の資金過不足から個々の国債の購入主体や金利変動が一意に決まるわけではない、という区別は編集上の説明である。 日銀資料: https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf 財務省資料: https://www.mof.go.jp/jgbs/publication/debt_management_report/2026/saimu2026-2-3.pdf

出典

一次資料22件・推計2件

一次資料のライブラリ 「財政と金利」の資料をまとめて見る →

根拠を見る(照合した記述 4か所)公開前の事実確認では、最初の照合(20か所)のうち3か所で、出典と合わない所や言い過ぎが見つかり、公開までに直した。

記事の事実の記述と、出典の該当箇所を並べた。事実確認の記録(10月23日まで)から作っている。

  1. 注1「第一生命経済研究所の解説(2012年4月)の文は「家計と企業の余剰資金が国債購入にあてられれば、財政赤字分をカバーできる状況で…」

    確認済み第一生命経済研究所 柵山順子「よく分かる!経済のツボ 経常収支赤字と財政赤字の関係」(2012年4月)該当箇所:「部門別資金バランス」の前の段確認済み財務省「財政制度等審議会 平成27年度予算の編成等に関する建議」(⁠2014年12月25日。印刷1⁠ページ)該当箇所:印刷1ページ未確認会田卓司・松本賢『何が日本経済を⁠壊したのか 「失われた30年」の⁠謎を解く18の経済講義』(ダイヤモンド社、2026年9月。第2・11・16講義)記録上の箇所:第11講義(既存記録上の⁠箇所)引用とこの資料の対応は未照合。

  2. 注1「国や地方の9.7兆円は、国の16.95兆円の不足から、年金などの基金(7.1兆円)と地方(0.1兆円)の余剰を差し引いた数字。」

    確認済み日本銀行 時系列統計データ検索サイト(資金循環統計の資金過不足。金融機関・非金融法人企業・一般政府・中央政府・地方公共団体・社会保障基金・家計・対家計民間非営利団体・海外。国際収支統計の⁠経常収支)該当箇所:2025年の中央政府・社会保障基金・地方公共団体の⁠四半期合計

  3. 注3「日銀の統計で海外に回ったお金(31兆8,029億円)と、財務省の速報の経常黒字(31兆8,799億円)は、数える範囲と、数字を…」

    確認済み日本銀行 時系列統計データ検索サイト(資金循環統計の資金過不足。金融機関・非金融法人企業・一般政府・中央政府・地方公共団体・社会保障基金・家計・対家計民間非営利団体・海外。国際収支統計の⁠経常収支)該当箇所:資金過不足 海外 2025年確認済み経済産業研究所 ディスカッション・ペーパー 97-DOJ-82「経常黒字急減の⁠原因」(⁠1997年5月)該当箇所:概要 第2段落冒頭

  4. 「緊縮志向のネットの資金需要0%を脱し「強く豊かな日本投資枠」で成長志向の-5%を目指すべき」

    当事者の主張会田卓司「緊縮志向のネットの資金需要0%を脱し「強く豊かな日本投資枠」で成長志向の-5%を目指すべき」(日本成長戦略会議 第6回 資料3-1、2026年6月30日。8ページ・15ページ・18ページ・65ページ) (元URLは10月24日取得不可。取得済み公表PDFで照合)該当箇所:65ページ「企業貯蓄率の⁠計算方法」

出典の該当箇所まで示せる記述だけを載せている。誤りに気づいたらcontact@instrsignal.com へ。

注1

第一生命経済研究所の解説(2012年4月)の文は「家計と企業の余剰資金が国債購入にあてられれば、財政赤字分をカバーできる状況です」。財政審の建議(2014年12月、印刷1ページ)も「家計の潤沢な預金等が、金融機関を通じて、国債の安定的な消化に寄与してきた」と書く。会田氏と松本賢氏の本(第11講義)も、会社がためたお金を預かった金融機関が国債を買う、と説明している。

第一生命経済研究所 柵山順子「よく分かる!経済のツボ 経常収支赤字と財政赤字の関係」(2012年4月)出典の一覧へ財務省「財政制度等審議会 平成27年度予算の編成等に関する建議」(2014年12月25日。印刷1ページ)出典の一覧へ会田卓司・松本賢『何が日本経済を壊したのか 「失われた30年」の謎を解く18の経済講義』(ダイヤモンド社、2026年9月。第2・11・16講義)出典の一覧へ日本銀行 時系列統計データ検索サイト(資金循環統計の資金過不足。金融機関・非金融法人企業・一般政府・中央政府・地方公共団体・社会保障基金・家計・対家計民間非営利団体・海外。国際収支統計の⁠経常収支)出典の一覧へ

注2

数字は、日本銀行「資金循環統計」の1年分を Instr Signal 編集部が合計したもの(2026年9月17日更新の値)。統計では、黒字を「資金余剰」、赤字を「資金不足」と呼ぶ。会社の24.1兆円には、銀行などの金融機関(日本銀行を含む)の8.1兆円が入る。日本銀行を除いて数えても、1998年から2025年まで28年すべてで、家計等と会社の黒字は一般政府の資金不足を上回る。国や地方の9.7兆円は、国の16.95兆円の不足から、年金などの基金(7.1兆円)と地方(0.1兆円)の余剰を差し引いた数字。第1回の約40兆円(40.3兆円)は、2025年度(4月〜翌年3月)の予算で決めた国の新しい借り入れの金額。この回は国内のお金で足りたかを見るので、2025年(1〜12月)の国・地方・年金などの基金を合わせたお金の出入りの差で比べた。資金循環統計の説明は、日本銀行「資金循環統計の解説」の「わが国における金融機関、法人、家計といった各部門の金融資産・負債の推移などを、預金や貸出といった金融商品毎に記録した統計」による。

注3

日銀の統計で海外に回ったお金(31兆8,029億円)と、財務省の速報の経常黒字(31兆8,799億円)は、数える範囲と、数字を出した時期が少し違い、770億円の差がある。経済産業研究所の論文(1997年)は、経常黒字を「海外に対する投資・融資であり、国内の貯蓄と投資の差額」と説明している。

日本銀行 時系列統計データ検索サイト(資金循環統計の資金過不足。金融機関・非金融法人企業・一般政府・中央政府・地方公共団体・社会保障基金・家計・対家計民間非営利団体・海外。国際収支統計の⁠経常収支)出典の一覧へ経済産業研究所 ディスカッション・ペーパー 97-DOJ-82「経常黒字急減の原因」(1997年5月)出典の一覧へ

注4

比べたのは、日銀の統計で今の区分の数字がそろう1998年から。銀行などを会社に含めずに数えると、2000・2001・2006・2008・2013・2020・2022年の7年は、家計等と会社の黒字が一般政府の資金不足に届かない。経常収支は28年すべて黒字で、いちばん小さいのは2014年の3兆9,215億円。国債の持ち主の数字は、財務省「財政総論」(財政制度等審議会 財政制度分科会の資料、2026年9月30日、印刷27ページ)の図による(もとは日本銀行の資金循環統計。国債は財投債と国庫短期証券を含む)。国内の86.9%の内訳は、日本銀行41.2%、銀行など17.8%、生命保険・損害保険会社など13.5%、公的年金と年金基金9.5%、家計1.9%、その他3.0%。

注5

財務省「日本の財政関係資料」(2026年4月、印刷23ページ)の文は「我が国では、これまで政府部門の赤字を民間貯蓄の黒字が上回って経常黒字となっていますが、経常収支が赤字となった場合は海外資金に依存せざるを得なくなります。今後とも財政健全化に向けた取組が必要です。」。同じページのコラム②は「海外投資家の国債保有割合・流通市場でのプレゼンスは上昇しており、海外投資家からの財政への信認を確保する必要性が一層増しています」と書く。経常収支が赤字になったときの金利については、第一生命経済研究所の解説(2012年4月)が、海外の投資家に国債を買ってもらうことになれば、より高い金利を求められ、国の利払いが増えると心配されている、と説明している(財務省の資料の記述ではない)。会田氏の2022年の論文(経団連の21世紀政策研究所の報告書、印刷47ページ)の文は「日本の国際経常収支は黒字であり、民間投資と財政支出が過剰ではない。もし財政支出が過剰で国際経常収支が赤字であれば、海外からの借り入れが必要になり」。

注6

28年の合計は、日本銀行「資金循環統計」の値を Instr Signal 編集部が合計したもの(会社の黒字は約714兆円、家計等と会社の黒字は約1,221兆円)。「半分以上」になるのは、銀行などの金融機関を会社に含めて数えた場合。財務省「日本の財政関係資料」(印刷23ページ)の図の注も「企業等=非金融法人+金融機関」と同じ範囲で数え、会田氏の「企業貯蓄率」も金融機関と非金融法人を合わせた範囲で数える(日本成長戦略会議 2026年6月30日資料 65ページ)。銀行などを除いたふつうの会社(非金融法人企業)だけで数えると、2025年の黒字は16.0兆円で、家計・対家計民間非営利団体の黒字17.4兆円より少なく、家計等と会社の黒字の約48%。会田氏と松本賢氏の本(第2講義)は、もうけより多く投資する会社は収支が赤字になるとして、「儲かっているけれど、赤字を出している企業」と呼ぶ。

注7

財政制度等審議会の建議(意見書。2026年6月26日、印刷47〜49ページ)。会社がもうけをため込んできた一方で、「それが必ずしも賃金上昇や国内投資の拡大に結びついてこなかった」と書く。同じ所で、中小企業では現預金が積み上がっているとし、もうけが株主への還元ばかりを増やす形を見直して、会社の内部の資金が賃金と人への投資、将来の市場をつくる投資に向かうような制度の設計が求められるとしている。2025年5月27日の建議(印刷6ページ)の文は「企業部門はほぼ一貫して貯蓄超過であり、かつ、その水準は諸外国と比べても高い」。

注8

参議院予算委員会公聴会(2026年3月24日。国会が専門家などから意見を聞く場)の会議録による。会田氏は「通常の経済であれば、企業は資金を調達、借りて投資をして事業を行います」と説明し、日本の会社は「賃金や投資などの国内支出をどんどん切り詰めて」いると述べた。貯蓄超過の説明は、会田氏と松本賢氏の本(第2講義)の図の説明(投資が利益より少ない会社は、収支が黒字の「貯蓄超過」)による。

注9

会田氏が日本成長戦略会議(2026年6月30日)に出した資料の推計(15ページ)。何年の値かは書かれておらず、国の投資が会社の投資をどれだけ引き出すかで場合を分けた表。引き出す力がこれまでと同じ場合(表の「成長戦略効果」1.0)は、GDPに対する割合で、会社は+3.7%、国は−3.7%、家計は+3.8%、経常黒字は3.8%。表でいちばん強く引き出す場合(2.5)は、会社は−3.3%(お金を借りて投資する)、国は−1.7%、家計は+7.1%、経常黒字は2.1%。どちらも会田氏自身の推計。会田氏は2022年の論文(印刷43ページ)でも「財政拡大でネットの資金需要が拡大した部分は、家計貯蓄率の上昇した部分で相殺され、国際経常収支の悪化はその差分で小さい」と書く。本文の、経常黒字が残るか赤字になるかで見分ける読み方は Instr Signal 編集部の読みで、財務省の資料にも会田氏の資料にも、こうした見分け方は書かれていない。経常黒字の大きさは、会社や家計のお金の使い方のほかに、原油の値段や円の動きでも変わる。第一生命経済研究所の解説(2012年4月)は、震災や円高、原油価格の高騰などで前の年に貿易収支が31年ぶりの赤字になり、経常収支の黒字幅も大きく縮んだと書く。会社の投資の動きは、財務省の法人企業統計でも見られる。

注10

日本銀行「参考図表 2026年第2四半期の資金循環(速報)」(2026年9月17日、図表6-2、印刷10〜11ページ)は、2026年6月末の海外保有を国債等合計で約150兆円、国債・財投債で約80兆円とする。時価ベースで、後者の海外保有比率は7.94%。短期証券の約70兆円は、兆円単位に丸められた両残高の差から求めた概算である。財務省「債務管理リポート2026」第Ⅱ編3(印刷85・93ページ)は、投資家層の多様化による市場安定への効果、海外投資の複数の動機、通貨ベーシス・スワップ利用時のヘッジ後利回りと短期証券の親和性を説明する。同レポートの保有割合6.8%・56.3%は2025年12月末速報値であり、本文の2026年6月末の数字とは混ぜていない。国全体の資金過不足から個々の国債の購入主体や金利変動が一意に決まるわけではない、という区別は編集上の説明である。 日銀資料: https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf 財務省資料: https://www.mof.go.jp/jgbs/publication/debt_management_report/2026/saimu2026-2-3.pdf

財政制度等審議会

財務省に置かれた審議会。財務大臣の諮問に応じて、国の予算・決算・会計の制度などの重要事項を調べて話し合い、財務大臣に意見を述べる。

財務省設置法第6条・第7条第1項

経常収支

日本と外国との取引のうち、モノの輸出入(貿易収支)、旅行や輸送などのサービス、利子や配当の受け払い(第一次所得収支)、寄付や無償の援助など(第二次所得収支)の収支を合わせたもの。

財務省「用語の解説」(国際収支状況)

財政審

財政制度等審議会の略。財務省に置かれた審議会。財務大臣の諮問に応じて、国の予算・決算・会計の制度などの重要事項を調べて話し合い、財務大臣に意見を述べる。

財務省設置法第6条・第7条第1項

訂正(2026年10月26日):2025年の資金余剰17.4兆円を家計だけの額としていた部門名を、家計・対家計民間非営利団体の合算へ訂正しました。本文・表・計算式・構造図・注の範囲をそろえ、内訳を追記しました。17.4兆円と合計値は変更していません。 あわせて注6の比率を原表の部門範囲で計算し直し、約4割から約48%へ訂正しました。金額と半分未満という結論は変えていません。

記事番号 2026-10-22-01 誤りの指摘と訂正の記録

訂正(2026年10月23日):前の版で「国の借金を支えてきたお金の半分以上は、会社がためたお金だ」と書きましたが、統計で言えるのは「家計と会社が使わずに残したお金(黒字)の半分以上は、銀行や保険会社を含む会社の黒字だ」という所までで、言い方が統計より強すぎました。おわびして直します。

以前の答え:国の借金は、これまで国内のお金でまかなえてきた。ただ、それを支えてきたお金の半分以上は銀行や保険会社を含む会社がためたお金で、会社がお金を使えば、国内で支えられる分は小さくなる。そのときに備えて、財務省は財政の立て直しを続けるべきだと見る。会田氏は、国が先にお金を使えば家計の黒字が増え、国内のお金で足りると見る。

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