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更新 2026年10月24日

NOISE報道の見出し

衆院選が公示 高市政権どう評価毎日新聞(2026年1月27日)

SIGNAL答え

借金の比率の改善と、暮らしを良くする成長は別に確かめる。 生産・賃金・国内投資の伸びも追う。

出典

国の借金の対GDP比は、2024年度まで下がってきた。だが、この数字だけでは、生産が増えて暮らしが良くなったかまでは分からない。GDPの金額は、生産量が増えても、物価が上がっても膨らむからだ。借金の比率の改善と、暮らしを良くする成長は、別に確かめる必要がある。

政府の会議で提言するエコノミストの会田卓司氏・永濱利廣氏と、財務省・()は、借金の対GDP比を下げるという目標を共有する。見方が分かれるのは、国の支出を増やしたとき、生産や賃金がどれだけ伸びるかだ。最終回では、これまでの実績と、これから確かめる数字を整理する。

本文の要点を図で振り返る

STRUCTUREこの記事の構造

  • 借金よりGDPが速く増加

    比率低下

  • GDPの金額の増加

    生産量増と物価高

  • 暮らし

    賃金の購買力と企業の国内投資

  • 予測の的中

    政策効果の証明とは別

借金より名目GDPが速く増え、対GDP比は下がってきた

GDPは、国内で1年間に生み出されたモノやサービスの価値の合計だ。その時々の価格で表した金額を「」といい、借金の残高をこの金額と比べたものが対GDP比になる。借金残高の増加率より名目GDPの成長率が高ければ、対GDP比は下がる⁠⁠。

国と地方の公債等残高の対GDP比は、2022年度の202.8%から2024年度には193.5%へ下がった⁠。財務省は、低金利の時期に発行した国債が残り、国が借金全体に払う平均利率より名目GDPの成長率が高かったことを、2023・2024年度の比率低下の背景に挙げる。財政審の建議は、赤字幅の縮小も低下に寄与したとしている。新しく発行する国債の金利が上がっても、過去の国債を含む平均利率は遅れて緩やかに上がるためだ⁠。

会田氏と松本賢氏の共著『何が日本経済を壊したのか』も、対GDP比が下がった大きな理由として、分母の名目GDPの急拡大を挙げている⁠。

この仕組みをもう少し詳しく見ると、借金が増える理由は二つに分かれる。利子を払うための借り入れと、利払い以外の政策経費をまかなうための借り入れだ。税収などで利払い以外の政策経費をどこまでまかなえているかを示す収支が、「(PB)」だ。税収などで政策経費をまかなえなければPBは赤字となり、その不足分も借金の増加に加わる。

  • 対GDP比の変化幅(%ポイント、概算) ≒[国債の平均利率(%)-(%)]×前年度の対GDP比(%)÷100+PB赤字の対GDP比(%)

平均利率を名目成長率が上回れば、比率を下げる方向に働く。一方、PB赤字は比率を押し上げる。金利と成長率の大小だけで決めず、政策経費の不足分も加えて見る必要がある、という式だ⁠。この比率を安定的に下げることを、政府も財政目標の中心に据えている⁠。

GDPの金額は大きく伸びたが、生産量の伸びは小さかった

次に、名目GDPが増えた中身を見る。物価の変動を除き、生産量の変化を捉えるのが「」だ。両者の関係は、次のように整理できる。

  • 名目成長率(金額の伸び率) ≒ 実質成長率(生産量の伸び率)+物価上昇率(GDPデフレーター上昇率)
年度 名目成長率 実質成長率
2023年度 4.9%⁠ 0.1%⁠
2024年度 4.0%⁠ 0.7%⁠
2025年度 4.3%⁠ 0.9%⁠

借金の対GDP比が下がった2023・2024年度は、名目GDPが4%台の伸びだったのに対し、実質GDPの伸びは1%未満だった。続く2025年度も同じ傾向にある。金額の拡大の多くは物価上昇によるもので、生産量の増加は小幅にとどまった⁠⁠。

物価が上がれば、借金の額面が変わらなくても実質的な負担は軽くなる。一方、家計の預金は、同じ金額で買える量が減る。国の借金の数字が改善しても、家計が豊かになったとは限らない⁠。生産が増え、賃金が物価を上回って伸びたかを、別に調べる理由がここにある。

ただし、2025年度の実質成長率0.9%だけで、高市政権の支出拡大の効果を決めることもできない。高市内閣が国債11.7兆円を追加発行するを組んだのは、その年度の後半に当たる2025年11月だった。国際通貨基金(IMF)も、日本の財政運営が拡張的に転じる年を2026年とみている⁠。支出後の生産や賃金の動きを、2026年度以降の数字で追う必要がある。

数値予測は会田氏と日銀にある 財務省の見方と混同しない

会田氏・永濱氏は、国の支出が企業の投資を促し、生産や賃金が伸びれば、借金の対GDP比も下がるとみる。財務省・財政審は、人手不足などで生産を増やせる余地が小さくなりつつあることや、金利と成長率の関係の不確かさを重く見ている⁠⁠。現時点の数字だけで、この先の見通しのどちらが実現するかは決まらない。

今回比べる年度別の物価・実質GDPの予測は、会田氏と日銀の公表資料から取った。会田氏は2026年6月30日の資料で、その後に政府が定める経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)に、新たな投資枠が盛り込まれて支出が増え、企業の投資が従来より強く反応すると見込んで、物価と実質GDPの年度別予測を示した。日銀も7月の展望レポートで、2028年度までの見通しを公表している。

一方、今回確認した財務省・財政審の資料には、同じ財政支出を前提に物価や実質GDPが何%になるかという数値予測は見つからなかった。永濱氏の具体的な年度予測も、今回の資料にはない。このため、以下では会田氏と日銀の予測を、それぞれ実績と比べる。日銀の予測を財務省の予測の代わりにすることはできない⁠。

最初は2026年度の物価 予測の前提をそろえて比べる

最初に実績がそろうのは、2026年度の物価だ。消費者が買うモノやサービスの価格のうち、生鮮食品とエネルギーを除いた「コアコアCPI」の年度平均を比べる。会田氏は1.7%、日銀は2.5%の上昇を予測している⁠。

ただし、同じ名前の物価指数でも、予測に含めた政策が違えば、そのまま比べられない。日銀は、生鮮食品を除く消費者物価の見通しに燃料補助や教育無償化による押し下げを織り込むが、会田氏の資料では扱いが分からない。コアコアCPIはエネルギーを含まないので、燃料補助の影響を単純に差し引くこともできない。比較する指数にどの政策が影響し、双方がそれをどう織り込んだかを、個別に確かめる必要がある。

税率の前提にも違いがある。会田氏の2027年度以降の物価予測は、2027年4月から飲食料品の消費税率が0%になることを前提とする。実際に閣議決定したは、同年4月1日から2年間、税率を1%にする内容だ。補助・無償化・税率変更の前提をそろえられなければ、予測同士の直接比較は保留する⁠。

年度平均のコアコアCPI上昇率 会田氏の予測(2026年6月) 日銀の予測(2026年7月)
2026年度 1.7%⁠ 2.5%⁠
2027年度 0.3%⁠ 2.6%⁠
2028年度 2.1%⁠ 2.2%⁠

*日銀の数値は政策委員の予測の中央値。各予測を順に並べた中央の値である。実績が公表される時期は、例年なら各年度が終わった後の4月ごろ。2026年度は2027年4月ごろになるが、正式日程は未確認だ⁠。*

前提をそろえたうえで、2026年度の実績が1.7%に近ければ会田氏の予測に、2.5%に近ければ日銀の予測に近い結果となる。それでも、国の支出が物価をどれだけ押し上げたかは、この比較だけでは分からない。日銀は物価上昇の要因に円安や半導体・資源高を挙げ、国の支出拡大は挙げていないためだ⁠。

生産の伸びは実質GDPで見る 予測の差が開くのは2028年度

物価に続き、生産量の変化を実質成長率で確かめる。会田氏の予測が日銀を上回るのは2028年度だ。2026年度は日銀を下回り、2027年度は同じ数字を見込む⁠。

実質GDPの成長率 会田氏の予測(2026年6月) 日銀の予測(2026年7月、中央値)
2026年度 0.3%⁠ 0.6%⁠
2027年度 0.8%⁠ 0.8%⁠
2028年度 1.4%⁠ 0.8%⁠

*各年度の実績の1次速報は、例年なら翌年度5月ごろ。2026年度は2027年5月、2027年度は2028年5月、2028年度は2029年5月ごろが目安だ。正式日程は未公表で、速報後も数字は改定される⁠。*

会田氏は、2027年に企業が設備投資を増やし、の上昇によって国内の消費なども回復するとみる。2028年度の実績と、会田氏の1.4%、日銀の0.8%をそれぞれ比べれば、この成長の見通しがどの程度実現したかを確かめられる。ただし、実施された政策や海外経済などの前提の変化も見る。会田氏自身も1%を超える実質成長を2028年度と予測しており、2025年度の0.9%だけで見通しが外れたとは言えない。

賃金と企業投資を追い、成長が暮らしに届く過程を確かめる

年度ごとの成長率だけでなく、その間に起きる変化も追う。

まずは、物価上昇を差し引いても賃金が増えているかだ。賃金の購買力を示す「実質賃金」が上がれば、受け取る賃金で買える量が増える。厚生労働省の毎月勤労統計では、年平均の実質賃金は2022〜2025年に4年連続で下がったが、2026年1〜8月は前年同月を8か月続けて上回った。会田氏の見通しでは、2027年も上昇が続く⁠。

次は、企業の国内投資と資金余剰だ。ここでいう資金余剰は、決算の利益そのものではない。企業部門が投資などにお金を使った後も、差し引きで資金が余る状態を指す。 利益が増えていても、それ以上に投資を増やせば、資金余剰は小さくなりうる。日銀の資金循環統計は、こうした部門ごとのと不足を記録している。

会田氏と松本氏の著書が描く順序は、国が数年にわたり支出を増やすことで経済の規模が広がり、企業が売上を伸ばそうと投資を増やし、資金余剰が減るというものだ⁠。ただし、投資と収入の増え方によって資金余剰も変わる。単年度に余剰が減らなかっただけで反証とせず、国内投資と資金余剰を数年にわたって並べ、この順序に沿った変化が起きているかを見る。

金利は、新しく借りるときの水準と、実際に払う平均を分ける

借金の負担を考えるうえでは、金利も追う必要がある。見る数字は二つある。

  • 市場の:新しく国債を発行するときの金利の目安。代表的な10年国債の利回りは、2026年10月20日時点で2.927%だった。
  • 国債全体の平均利率:すでに発行した国債も含め、国が実際に払う金利。市場金利が上がっても、低金利の古い国債が残る間は、遅れて上がる。

年度ごとの名目成長率と、その年度の長期金利の動きを照らし合わせる。長期金利が名目成長率を下回り続ければ会田氏の見通しと食い違わず、上回る年が続けば、将来の平均利率を押し上げる懸念が強まる。借金の対GDP比への影響は、実際に払う平均利率とPBの収支を合わせて確かめる⁠。

財務省の利払いの試算は、名目成長率を仮に3%と置いている。これは将来の予測ではなく、支払いに備えるための計算上の前提だ。会田氏の予測とは性格が違うため、金利が低く推移しただけで財務省の慎重な備えが不適切だったとは言えない。

いま確かめられることと、結果を待たずに選ぶことを分ける

ここまでの結論は、次の四つに分かれる。

  • 言い切れること:2024年度まで借金の対GDP比は下がった。一方、2023〜2025年度の名目GDPの伸びは主に物価上昇によるもので、生産量の伸びは小幅だった。比率の改善だけで、暮らしを良くする成長が進んだとは判断できない。
  • 条件つきで言えること:政策などの前提をそろえれば、物価や実質成長率の実績を会田氏と日銀の各予測と比べられる。ただし、予測に近いことは、その変化を国の支出がもたらした証明にはならない。
  • 資料だけでは決まらないこと:2026年以降の支出拡大が、生産や賃金をどれだけ増やすか。その成長によって名目GDPが借金より速く増え、対GDP比が下がり続けるか。いずれも、現時点では答えが出ない。物価、実質GDP、賃金、企業投資、金利を、順に確かめる必要がある。
  • 有権者が選ぶこと:数字がそろう前にも、国がどの規模で支出するかを決めなければならない。支出拡大の見通しが外れれば、物価高・円安・金利上昇が家計を圧迫するおそれがある。支出を抑える見通しが外れれば、賃金の伸び悩みやデフレへの逆戻りが起きるおそれがある。どちらの損失を重くみるかは、数字だけでは決まらない。

選ぶ際は、見通しだけでなく、外れたときに政策を修正できるかも確かめたい。会田氏は、企業と政府を合わせた「ネットの資金需要」にGDP比マイナス5%という目安を設け、過熱時の増税や金融引き締めを挙げる⁠⁠。ただし、インフレ下で実際に増税や歳出削減ができるか、企業の投資が増えなかったときにいつ支出を見直すかは、今回の資料では分からない。財務省・財政審も、対GDP比の安定的な引き下げを求める一方、見立てが外れて需要不足になったとき、どの段階でどう政策を転換するかは、今回確認した資料に示していない⁠。

2028年度の実質GDPが公表されても、財政支出の効果に最終決着がつくわけではない。予測が当たったかを確かめ、なぜその結果になったかを調べる。その積み重ねが必要になる。

各統計をいつ、何と比べるかは、独立した別紙「今後何を見れば分かるのか」の一覧表にまとめた。

注

  1. 注1名目成長率の説明は、内閣府 経済社会総合研究所「企業行動に関するアンケート調査 用語の解説」の名目経済成長率の字「実際に市場で取り引きされている価格で表した増減率」による。2025年度の名目GDPは前年度比+4.3%(内閣府「2026年4〜6月期四半期別GDP速報(2次速報値)」の年度の表)。
  2. 注2財務省「これからの日本のために財政を考える」(2026年4月)は、債務残高対GDP比の分子の伸びを金利、分母の伸びを経済成長率で説明する。財務省「財政総論(参考資料)」(2026年9月30日、9枚目)の式は「債務残高対GDP比の増加幅 ≈ 債務残高/GDP ×(実効金利(r)−名目経済成長率(g))+ PB赤字対GDP比」。PB(プライマリーバランス)の赤字は、税収などで足りずに新しく借りる分にあたる。国が借金して使うときは、新しく借りた分も上回るほどGDPの金額が伸びなければ、借金の重さは下がらない。GDPを「国の経済の規模」と呼ぶ言い方は、「これからの日本のために財政を考える」19ページの「国の経済規模(GDP)」による。
  3. 注3財務省「日本の財政関係資料」(2026年4月、印刷22ページの表。出所は内閣府「中長期の経済財政に関する試算」2026年1月)の、国・地方の公債等残高の対GDP比。
  4. 注4財務省「財政総論」(財政制度等審議会 財政制度分科会の資料、2026年9月30日)PDF 19枚目は、債務残高対GDP比が「低金利時代に発行した国債が残存し、名目実効金利を名目成長率が上回る状況にあることも背景に、2023・2024年度は低下」と書く。実効金利は「既発債を含めて政府が実際に支払う金利」(PDF 20枚目の備考)。同じ日の参考資料(10枚目、内閣府の中長期試算 2026年7月)は、実効金利は「名目長期金利に遅れて徐々に上昇していく」とする。 財政審の建議(2026年6月26日、印刷7ページ)は、PB赤字幅の縮小以外に、低金利時代の国債が残る中で名目成長率が実効金利を上回ったことも寄与したと書く。
  5. 注5会田卓司・松本賢『何が日本経済を壊したのか』(ダイヤモンド社、2026年9月)第18講義。対GDP比が下がったのは分母の名目GDPがコロナ禍後に急に大きくなったせいか、という問いに「その要因が大きいだろうね」と答え、国債の価格の下落や、税収が増えて新しい国債を抑えられたことも挙げる(本は対話の形で、どちらの著者の字かは分けていない)。
  6. 注6内閣府「2026年4〜6月期四半期別GDP速報(2次速報値)」の年度の表。前年度比で、名目GDPは2023年度+4.9%、2024年度+4.0%、2025年度+4.3%、実質GDPは同じ順に+0.1%、+0.7%、+0.9%。借金の重さの変化を、金利・実質成長率・物価・PB などの要因に分けた内閣府の図(財政総論 PDF 20枚目)もあるが、要因ごとの値はこの記事では使っていない。
  7. 注7財政審の建議(2026年6月26日、印刷7ページ)「この名目成長率は物価上昇によるデフレータ上昇の影響もあることに留意が必要」。会田氏と松本氏の本の第16講義「名目GDPはコロナ禍後にぐんと伸びているが、インフレの影響を取り除いた実質GDPはそれほど伸びていないんだ」。
  8. 注8第一生命経済研究所の熊野英生氏(東洋経済オンライン、2023年9月12日)「物価が2倍になれば、過去の債務価値は半分に減る」「政府債務残高が軽くなるとき、同時に家計金融資産残高も軽くなる」。国債を買うお金の出どころは第3回で見たもので、財政審の建議(2014年12月、印刷1ページ)は「家計の潤沢な預金等が、金融機関を通じて、国債の安定的な消化に寄与してきた」と書き、会田氏と松本氏の本の第11講義は、会社がためたお金を預かった金融機関が国債を買う、と説明している。
  9. 注9財務省「令和7年度一般会計補正予算(第1号)等について」(2025年11月28日)。公債金の追加は11兆6,960億円。IMF の2026年の対日4条協議の報告書(¶19)「The fiscal stance is expected to turn expansionary in 2026」。基礎的赤字は2025年のGDP比0.9%から2026年に1.5%へ広がるとし、理由として、2025年12月の大きな補正予算と、補正予算を続ける慣行を基本の想定に入れたことを挙げる。
  10. 注10会田氏と松本氏の本の第11講義。国が使って会社が投資と借り入れを増やせば金利は上がるが、成長に伴う上昇なので「税収は増えているはず」で、財政を悪くしないとする。第17講義「供給能力が向上するまでは、インフレはやや高止まりするかもしれない」。永濱氏は2026年1月22日の経済財政諮問会議で、投資で経済を成長させて分母を大きくすれば債務比率が下がるので「成長こそが最大の財政健全化策」と述べた。会田氏は参議院予算委員会公聴会(2026年3月24日、発言2)で「経済の負債構造が強靱であれば、名目GDP成長率を大きく上回るような金利の高騰は考えにくい」と述べた。名目成長率と長期金利の見込みは注17。
  11. 注11財政審の建議(2026年6月26日)印刷1ページ。経済は「需給が引き締まる中で供給面の制約に直面する段階に移行しつつあることを示唆している」。印刷14ページ。1980年度からの約45年で「実効金利が名目成長率を上回る期間の方が長く、成長率と金利の関係には大きな不確実性が伴う」。上回った年度は約45年のうち32年(建議の注30)。財政総論の参考資料(10枚目、内閣府の中長期試算 2026年7月)は、実効金利が「現状投影ケースでは2030年代前半、成長戦略実現ケース②では2030年代後半、成長戦略実現ケース①では2040年度頃に、それぞれ名目成長率に近づく姿」とする。
  12. 注12財務省・財政審の側に、国の支出と物価の関係を示す数字が無いことは、財政審の建議(2026年6月)と財政総論(2026年9月30日)の通読による。会田氏の見通しは日本成長戦略会議の資料(2026年6月30日)5ページの表(会田氏が所属するクレディ・アグリコル証券の見通し)、日銀の見通しは「経済・物価情勢の展望(2026年7月)」印刷10ページの政策委員の見通しの中央値。永濱氏の発言(注10・注21)に、物価や実質GDPの見込みの数字は無い。
  13. 注13会田氏の資料(2026年6月30日)5ページの表(前年度比)は、2026・2027・2028年度の実質GDPを+0.3%・+0.8%・+1.4%、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価を+1.7%・+0.3%・+2.1%とし、「2027年4月から食料品消費税ゼロ%を前提」と書く(実際に決まったのは1%)。同じページは、見通しの筋を「2026年の骨太の方針で、新たな投資枠を中心に戦略投資の積極財政への動きが始まる」「コアコア物価上昇率(除く生鮮食品・エネルギー、消費税の影響)は景気停滞による減速の後、2%の物価目標に向かって再拡大」「2027年には、設備投資サイクルの上振れと実質賃金の上昇による内需の回復」と書く。36ページは物価の見通しの前提条件に「内需が腰折れないことと急激な円高にならないこと」を挙げる。日銀の中央値は同じ順に、実質GDP+0.6%・+0.8%・+0.8%、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価+2.5%・+2.6%・+2.2%。日銀は補助や教育の無償化が2026年度の物価を押し下げると書く(印刷4ページ)。会田氏の表が補助や無償化をどう扱っているかは、資料に書かれていない。飲食料品の消費税は、閣議決定した大綱(2026年9月15日。財政総論 PDF 42枚目)で、2027年4月1日から2年間、税率を1%にする。日銀の次の見通しは10月30日の予定(金融政策決定会合の日程)。
  14. 注14日銀の展望レポート(2026年7月)印刷35ページは、生鮮食品とエネルギーを除く物価が来年度初にかけて3%を超えるまで加速する要因に「①昨秋以降の為替円安をパススルーする動きや、②AI関連需要の拡大を受けた半導体等の価格上昇に加え、③中東情勢を受けたエネルギー・原材料価格上昇」を挙げ、その後は「2%台前半」に戻るとする(印刷36ページ)。
  15. 注15実質賃金は厚生労働省「毎月勤労統計調査」(事業所規模5人以上、持家の帰属家賃を除く総合の物価で実質化)。年平均は2022年−1.0%、2023年−2.5%、2024年−0.3%、2025年−1.3%。2026年1〜8月は8か月続けてプラス(0.7〜2.2%。8月は速報)。会田氏の資料(2026年6月30日)39ページは、2027年に「実質賃金の上昇が、消費の回復につながる」とする。財政審の建議(2026年6月、印刷2ページ)は「2026年1月から実質賃金がプラスに転じたものの」、定着したか否かは「依然として予断を許さない」と書く。日銀の展望レポート(2026年7月、印刷27ページ)は、働く人全体の所得(雇用者所得)について「実質ベースでみると、物価上昇率の高まりからいったんはっきりと減速するとみられる」とする。これは毎月勤労統計の実質賃金とは別の数字。
  16. 注16日本銀行の資金循環統計(3か月ごと。2026年10〜12月期の公表は2027年3月17日の予定)。2025年は、会社が1年の間に使わずに残したお金(会社の黒字。銀行や保険会社を含む)24.1兆円が、国や地方の赤字9.7兆円を上回っていた(第3回)。会田氏と松本氏の本の第9講義は、数年にわたって財政赤字を膨らませて「経済のパイ」が膨らみ続ければ、会社が増えたパイを取りに投資し、貯蓄超過から投資超過に移ると説明する。
  17. 注17長期金利は、お金を貸し借りする期間が1年以上の場合の金利で、満期10年の国債の利回りが代表的な指標(共同通信の用語解説、コトバンク「長期金利」)。10年国債の利回りは2026年10月20日に2.927%、9月30日に3.057%(財務省「国債金利情報」)。会田氏は公聴会(2026年3月24日、発言77)で、物価安定目標の2%に実質成長率の1%台が加われば、名目は「三%台」と説明し、6月30日の資料19ページで「実質政策金利がマイナスを脱すれば、国債10年金利は3%程度に上昇」とする。国が実際に払う金利が長期金利に遅れて上がることは注4、内閣府の試算で名目成長率に近づく時期は注11。財務省の利払費の試算(財政総論 PDF 27枚目)が2029年度までの名目経済成長率を3%としているのは、試算のために仮に置いた値で、見込みではない。
  18. 注18内閣府「2024年度国民経済計算年次推計」付表18の純貸出/純借入の対GDP比は、2024年度に非金融法人企業+2.2%、一般政府−1.4%で、足すと+0.8%(計算)。会田氏はこれを「ネットの資金需要」(企業貯蓄率+財政収支)と呼び、「ネットの資金需要を-5%以内とすることを、フローの財政規律とする」(2026年6月30日の資料8ページ)。公聴会(2026年3月24日、発言82)では「ネットの資金需要がマイナス五ぐらいですと名目GDPが三%、そして物価はおおよそ二%台」と述べた。会田氏は同じ6月の資料の表題で、今を「緊縮志向のネットの資金需要0%」と書く。会田氏の企業貯蓄率が国民経済計算の非金融法人企業と同じ範囲かは、資料に書かれていない。
  19. 注19会田氏と松本氏の本の第11講義。会社の借り入れだけで行き過ぎたときは「増税(財政政策)をしたり、政策金利(金融政策)を上げたりして、過熱した景気を冷ませばいい」。国会会議録「参議院予算委員会公聴会」(2026年3月24日)の発言81で、質問者は「インフレでみんなが大変なときに増税なんてできるんだろうか」と聞き、会田氏は発言82で「マイナス五までの財政拡大にしておく」ことが大事だと答えた。
  20. 注20財政審の建議(2026年6月26日、印刷6〜7ページ)は、財政を「需要喚起に偏ることなく」運営するよう求める。財政総論(2026年9月30日)の物差しは「債務残高対GDP比の安定的低下」と、その中でも可能となる財政規模で、会田氏のマイナス5%のような数字の線は無い。財政審の建議(2025年12月2日、印刷1ページ)は、日本経済は「再びデフレに後戻りしない「成長型経済」に移行できるかどうか、という分岐点」に立つとする。見立てが外れたときの手を書いた所は、建議(2025年12月・2026年6月)と財政総論の通読では見つからなかった。
  21. 注21骨太方針2026(財政総論 PDF 18枚目の抜粋)。財政運営の目標は「「責任ある積極財政」の考え方に立脚」し、「国・地方の総債務残高対GDP比の安定的低下を中核に位置付ける」。予算編成では「債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく中でも可能となる財政規模を精査」する。正式な名前は「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026年7月21日閣議決定)。永濱氏は2026年1月22日の経済財政諮問会議で「国際社会が見ているグローバルスタンダードは債務残高対GDP比になる」と述べ、会田氏と松本氏の本の第18講義も、骨太方針2026のこの目標を引いている。
  22. 注22内閣府の公表予定と日本銀行の公表予定を2026年10月24日に確認。GDPは2026年7〜9月期1次速報が11月16日、10〜12月期が2027年2月15日の予定。2027年1〜3月期以降の正式予定日は未掲載で、本文の各年5月ごろは例年の公表時期から置いた目安。物価の各年4月ごろも正式日程未確認の目安である。日銀10月展望レポートは10月30日が基本的見解、11月2日が全文の予定。https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kouhyou/kouhyou_top.html https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm

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一次資料21件・報道1件

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注1

名目成長率の説明は、内閣府 経済社会総合研究所「企業行動に関するアンケート調査 用語の解説」の名目経済成長率の字「実際に市場で取り引きされている価格で表した増減率」による。2025年度の名目GDPは前年度比+4.3%(内閣府「2026年4〜6月期四半期別GDP速報(2次速報値)」の年度の表)。

注2

財務省「これからの日本のために財政を考える」(2026年4月)は、債務残高対GDP比の分子の伸びを金利、分母の伸びを経済成長率で説明する。財務省「財政総論(参考資料)」(2026年9月30日、9枚目)の式は「債務残高対GDP比の増加幅 ≈ 債務残高/GDP ×(実効金利(r)−名目経済成長率(g))+ PB赤字対GDP比」。PB(プライマリーバランス)の赤字は、税収などで足りずに新しく借りる分にあたる。国が借金して使うときは、新しく借りた分も上回るほどGDPの金額が伸びなければ、借金の重さは下がらない。GDPを「国の経済の規模」と呼ぶ言い方は、「これからの日本のために財政を考える」19ページの「国の経済規模(GDP)」による。

注3

財務省「日本の財政関係資料」(2026年4月、印刷22ページの表。出所は内閣府「中長期の経済財政に関する試算」2026年1月)の、国・地方の公債等残高の対GDP比。

注4

財務省「財政総論」(財政制度等審議会 財政制度分科会の資料、2026年9月30日)PDF 19枚目は、債務残高対GDP比が「低金利時代に発行した国債が残存し、名目実効金利を名目成長率が上回る状況にあることも背景に、2023・2024年度は低下」と書く。実効金利は「既発債を含めて政府が実際に支払う金利」(PDF 20枚目の備考)。同じ日の参考資料(10枚目、内閣府の中長期試算 2026年7月)は、実効金利は「名目長期金利に遅れて徐々に上昇していく」とする。 財政審の建議(2026年6月26日、印刷7ページ)は、PB赤字幅の縮小以外に、低金利時代の国債が残る中で名目成長率が実効金利を上回ったことも寄与したと書く。

注5

会田卓司・松本賢『何が日本経済を壊したのか』(ダイヤモンド社、2026年9月)第18講義。対GDP比が下がったのは分母の名目GDPがコロナ禍後に急に大きくなったせいか、という問いに「その要因が大きいだろうね」と答え、国債の価格の下落や、税収が増えて新しい国債を抑えられたことも挙げる(本は対話の形で、どちらの著者の字かは分けていない)。

注6

内閣府「2026年4〜6月期四半期別GDP速報(2次速報値)」の年度の表。前年度比で、名目GDPは2023年度+4.9%、2024年度+4.0%、2025年度+4.3%、実質GDPは同じ順に+0.1%、+0.7%、+0.9%。借金の重さの変化を、金利・実質成長率・物価・PB などの要因に分けた内閣府の図(財政総論 PDF 20枚目)もあるが、要因ごとの値はこの記事では使っていない。

注7

財政審の建議(2026年6月26日、印刷7ページ)「この名目成長率は物価上昇によるデフレータ上昇の影響もあることに留意が必要」。会田氏と松本氏の本の第16講義「名目GDPはコロナ禍後にぐんと伸びているが、インフレの影響を取り除いた実質GDPはそれほど伸びていないんだ」。

注8

第一生命経済研究所の熊野英生氏(東洋経済オンライン、2023年9月12日)「物価が2倍になれば、過去の債務価値は半分に減る」「政府債務残高が軽くなるとき、同時に家計金融資産残高も軽くなる」。国債を買うお金の出どころは第3回で見たもので、財政審の建議(2014年12月、印刷1ページ)は「家計の潤沢な預金等が、金融機関を通じて、国債の安定的な消化に寄与してきた」と書き、会田氏と松本氏の本の第11講義は、会社がためたお金を預かった金融機関が国債を買う、と説明している。

注9

財務省「令和7年度一般会計補正予算(第1号)等について」(2025年11月28日)。公債金の追加は11兆6,960億円。IMF の2026年の対日4条協議の報告書(¶19)「The fiscal stance is expected to turn expansionary in 2026」。基礎的赤字は2025年のGDP比0.9%から2026年に1.5%へ広がるとし、理由として、2025年12月の大きな補正予算と、補正予算を続ける慣行を基本の想定に入れたことを挙げる。

注10

会田氏と松本氏の本の第11講義。国が使って会社が投資と借り入れを増やせば金利は上がるが、成長に伴う上昇なので「税収は増えているはず」で、財政を悪くしないとする。第17講義「供給能力が向上するまでは、インフレはやや高止まりするかもしれない」。永濱氏は2026年1月22日の経済財政諮問会議で、投資で経済を成長させて分母を大きくすれば債務比率が下がるので「成長こそが最大の財政健全化策」と述べた。会田氏は参議院予算委員会公聴会(2026年3月24日、発言2)で「経済の負債構造が強靱であれば、名目GDP成長率を大きく上回るような金利の高騰は考えにくい」と述べた。名目成長率と長期金利の見込みは注17。

注11

財政審の建議(2026年6月26日)印刷1ページ。経済は「需給が引き締まる中で供給面の制約に直面する段階に移行しつつあることを示唆している」。印刷14ページ。1980年度からの約45年で「実効金利が名目成長率を上回る期間の方が長く、成長率と金利の関係には大きな不確実性が伴う」。上回った年度は約45年のうち32年(建議の注30)。財政総論の参考資料(10枚目、内閣府の中長期試算 2026年7月)は、実効金利が「現状投影ケースでは2030年代前半、成長戦略実現ケース②では2030年代後半、成長戦略実現ケース①では2040年度頃に、それぞれ名目成長率に近づく姿」とする。

注12

財務省・財政審の側に、国の支出と物価の関係を示す数字が無いことは、財政審の建議(2026年6月)と財政総論(2026年9月30日)の通読による。会田氏の見通しは日本成長戦略会議の資料(2026年6月30日)5ページの表(会田氏が所属するクレディ・アグリコル証券の見通し)、日銀の見通しは「経済・物価情勢の展望(2026年7月)」印刷10ページの政策委員の見通しの中央値。永濱氏の発言(注10・注21)に、物価や実質GDPの見込みの数字は無い。

注13

会田氏の資料(2026年6月30日)5ページの表(前年度比)は、2026・2027・2028年度の実質GDPを+0.3%・+0.8%・+1.4%、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価を+1.7%・+0.3%・+2.1%とし、「2027年4月から食料品消費税ゼロ%を前提」と書く(実際に決まったのは1%)。同じページは、見通しの筋を「2026年の骨太の方針で、新たな投資枠を中心に戦略投資の積極財政への動きが始まる」「コアコア物価上昇率(除く生鮮食品・エネルギー、消費税の影響)は景気停滞による減速の後、2%の物価目標に向かって再拡大」「2027年には、設備投資サイクルの上振れと実質賃金の上昇による内需の回復」と書く。36ページは物価の見通しの前提条件に「内需が腰折れないことと急激な円高にならないこと」を挙げる。日銀の中央値は同じ順に、実質GDP+0.6%・+0.8%・+0.8%、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価+2.5%・+2.6%・+2.2%。日銀は補助や教育の無償化が2026年度の物価を押し下げると書く(印刷4ページ)。会田氏の表が補助や無償化をどう扱っているかは、資料に書かれていない。飲食料品の消費税は、閣議決定した大綱(2026年9月15日。財政総論 PDF 42枚目)で、2027年4月1日から2年間、税率を1%にする。日銀の次の見通しは10月30日の予定(金融政策決定会合の日程)。

注14

日銀の展望レポート(2026年7月)印刷35ページは、生鮮食品とエネルギーを除く物価が来年度初にかけて3%を超えるまで加速する要因に「①昨秋以降の為替円安をパススルーする動きや、②AI関連需要の拡大を受けた半導体等の価格上昇に加え、③中東情勢を受けたエネルギー・原材料価格上昇」を挙げ、その後は「2%台前半」に戻るとする(印刷36ページ)。

注15

実質賃金は厚生労働省「毎月勤労統計調査」(事業所規模5人以上、持家の帰属家賃を除く総合の物価で実質化)。年平均は2022年−1.0%、2023年−2.5%、2024年−0.3%、2025年−1.3%。2026年1〜8月は8か月続けてプラス(0.7〜2.2%。8月は速報)。会田氏の資料(2026年6月30日)39ページは、2027年に「実質賃金の上昇が、消費の回復につながる」とする。財政審の建議(2026年6月、印刷2ページ)は「2026年1月から実質賃金がプラスに転じたものの」、定着したか否かは「依然として予断を許さない」と書く。日銀の展望レポート(2026年7月、印刷27ページ)は、働く人全体の所得(雇用者所得)について「実質ベースでみると、物価上昇率の高まりからいったんはっきりと減速するとみられる」とする。これは毎月勤労統計の実質賃金とは別の数字。

注16

日本銀行の資金循環統計(3か月ごと。2026年10〜12月期の公表は2027年3月17日の予定)。2025年は、会社が1年の間に使わずに残したお金(会社の黒字。銀行や保険会社を含む)24.1兆円が、国や地方の赤字9.7兆円を上回っていた(第3回)。会田氏と松本氏の本の第9講義は、数年にわたって財政赤字を膨らませて「経済のパイ」が膨らみ続ければ、会社が増えたパイを取りに投資し、貯蓄超過から投資超過に移ると説明する。

注17

長期金利は、お金を貸し借りする期間が1年以上の場合の金利で、満期10年の国債の利回りが代表的な指標(共同通信の用語解説、コトバンク「長期金利」)。10年国債の利回りは2026年10月20日に2.927%、9月30日に3.057%(財務省「国債金利情報」)。会田氏は公聴会(2026年3月24日、発言77)で、物価安定目標の2%に実質成長率の1%台が加われば、名目は「三%台」と説明し、6月30日の資料19ページで「実質政策金利がマイナスを脱すれば、国債10年金利は3%程度に上昇」とする。国が実際に払う金利が長期金利に遅れて上がることは注4、内閣府の試算で名目成長率に近づく時期は注11。財務省の利払費の試算(財政総論 PDF 27枚目)が2029年度までの名目経済成長率を3%としているのは、試算のために仮に置いた値で、見込みではない。

注18

内閣府「2024年度国民経済計算年次推計」付表18の純貸出/純借入の対GDP比は、2024年度に非金融法人企業+2.2%、一般政府−1.4%で、足すと+0.8%(計算)。会田氏はこれを「ネットの資金需要」(企業貯蓄率+財政収支)と呼び、「ネットの資金需要を-5%以内とすることを、フローの財政規律とする」(2026年6月30日の資料8ページ)。公聴会(2026年3月24日、発言82)では「ネットの資金需要がマイナス五ぐらいですと名目GDPが三%、そして物価はおおよそ二%台」と述べた。会田氏は同じ6月の資料の表題で、今を「緊縮志向のネットの資金需要0%」と書く。会田氏の企業貯蓄率が国民経済計算の非金融法人企業と同じ範囲かは、資料に書かれていない。

注19

会田氏と松本氏の本の第11講義。会社の借り入れだけで行き過ぎたときは「増税(財政政策)をしたり、政策金利(金融政策)を上げたりして、過熱した景気を冷ませばいい」。国会会議録「参議院予算委員会公聴会」(2026年3月24日)の発言81で、質問者は「インフレでみんなが大変なときに増税なんてできるんだろうか」と聞き、会田氏は発言82で「マイナス五までの財政拡大にしておく」ことが大事だと答えた。

注20

財政審の建議(2026年6月26日、印刷6〜7ページ)は、財政を「需要喚起に偏ることなく」運営するよう求める。財政総論(2026年9月30日)の物差しは「債務残高対GDP比の安定的低下」と、その中でも可能となる財政規模で、会田氏のマイナス5%のような数字の線は無い。財政審の建議(2025年12月2日、印刷1ページ)は、日本経済は「再びデフレに後戻りしない「成長型経済」に移行できるかどうか、という分岐点」に立つとする。見立てが外れたときの手を書いた所は、建議(2025年12月・2026年6月)と財政総論の通読では見つからなかった。

注21

骨太方針2026(財政総論 PDF 18枚目の抜粋)。財政運営の目標は「「責任ある積極財政」の考え方に立脚」し、「国・地方の総債務残高対GDP比の安定的低下を中核に位置付ける」。予算編成では「債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく中でも可能となる財政規模を精査」する。正式な名前は「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026年7月21日閣議決定)。永濱氏は2026年1月22日の経済財政諮問会議で「国際社会が見ているグローバルスタンダードは債務残高対GDP比になる」と述べ、会田氏と松本氏の本の第18講義も、骨太方針2026のこの目標を引いている。

注22

内閣府の公表予定と日本銀行の公表予定を2026年10月24日に確認。GDPは2026年7〜9月期1次速報が11月16日、10〜12月期が2027年2月15日の予定。2027年1〜3月期以降の正式予定日は未掲載で、本文の各年5月ごろは例年の公表時期から置いた目安。物価の各年4月ごろも正式日程未確認の目安である。日銀10月展望レポートは10月30日が基本的見解、11月2日が全文の予定。https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kouhyou/kouhyou_top.html https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm

財政制度等審議会

財務省に置かれた審議会。財務大臣の諮問に応じて、国の予算・決算・会計の制度などの重要事項を調べて話し合い、財務大臣に意見を述べる。

財務省設置法第6条・第7条第1項

基礎的財政収支

税収・税外収入と、国債費(国債の元本の返済や利子の支払いに充てる費用など)を除いた歳出との収支。その時点の政策の経費を、その時点の税収などでどれだけまかなえているかを示す。

財務省「基礎的財政収支とは何ですか。何が分かりますか」(よくあるご質問)

資金の余り

日本銀行の資金循環統計の「資金過不足」がプラスの状態(資金余剰)。ある期間に資金を運用した額が調達した額を上回った分で、収入などに比べて投資や支出が少なかったことを示す。

日本銀行「資金循環統計のFAQ」1−7/「資金循環統計の概要」(資金余剰=純貸出、資金不足=純借入)

名目GDP

実際に市場で取り引きされている価格で計った国内総生産(GDP)。物価の上昇・下落の分を取り除いた実質GDPと違い、物価の動きの影響を受ける。

内閣府 経済社会総合研究所「名目値と実質値の違いは?」(国民経済計算 よくある質問)

名目成長率

名目経済成長率のこと。実際に市場で取り引きされている価格で表した増減率。物価の変動分を取り除いて表した実質成長率と違い、物価の動きを含む。

内閣府 経済社会総合研究所「企業行動に関するアンケート調査 用語の解説」(名目経済成長率(名目成長率))

実質GDP

ある年(参照年)からの物価の上昇・下落の分を取り除いて計った国内総生産(GDP)。実際に市場で取り引きされている価格で計る名目GDPと違い、インフレ・デフレによる物価の変動の影響を除いている。

内閣府 経済社会総合研究所「名目値と実質値の違いは?」(国民経済計算 よくある質問)

補正予算

予算を作った後に生じた事情で特に急いで要るようになった支出や、国の義務の経費の不足を補うため、内閣が予算に追加や変更を加えて国会に出す予算。

財政法第29条

長期金利

お金を貸し借りする期間が1年以上の場合に適用される金利の総称。満期までの期間が10年の国債の市場利回りが代表的な指標で、住宅ローンの固定金利などの基準になる。景気の先行きや物価の上昇などにより変動する。

共同通信ニュース用語解説「長期金利」(コトバンク)

実質賃金

名目賃金指数(現金給与総額)を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で割って出す、物価の動きの影響を取り除いた賃金の指数。厚生労働省の毎月勤労統計調査が毎月出す。

厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年8月分結果速報」概況(印刷16ページ)

財政審

財政制度等審議会の略。財務省に置かれた審議会。財務大臣の諮問に応じて、国の予算・決算・会計の制度などの重要事項を調べて話し合い、財務大臣に意見を述べる。

財務省設置法第6条・第7条第1項

大綱

政府が政策の骨組みを決めてまとめた文書。この減税については、2026年9月15日に「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定され、法案はこの大綱をもとに作られた。

内閣官房「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(2026年9月15日閣議決定)

PB

基礎的財政収支(プライマリーバランス)のこと。税収・税外収入と、国債費(国債の元本の返済や利子の支払いに充てる費用など)を除いた歳出との収支。その時点の政策の経費を、その時点の税収などでどれだけまかなえているかを示す。

財務省「基礎的財政収支とは何ですか。何が分かりますか」(よくあるご質問)

記事番号 2026-10-26-01 誤りの指摘と訂正の記録

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